# オレオの“パクリ”と誤解され続けた元祖クッキーの悲劇

配信日: 2026-07-10(夕18:00配信) / 通巻 第15号 / カテゴリ: 食

黒くて丸い、クリームを挟んだサンドクッキー——と言われて多くの人が思い浮かべるのは「オレオ」だろう。世界中のスーパーに並び、「元祖ブラックサンドクッキー」としての地位はすっかり定着している。子供の頃からある定番菓子で、この見た目の黒いサンドクッキーを最初に考え出したのはオレオだ、と当たり前のように信じている人も多いはずだ。

ところが、この"元祖"の座には大きな誤解が隠れている。実はオレオより先に、そっくりな黒いサンドクッキーが世に出ていた。その名は「Hydrox」。菓子メーカーのサンシャイン・ビスケッツ社が1908年に発売した商品で、オレオの登場は1912年。つまりHydroxはオレオより4年も早く生まれた、正真正銘の元祖だったのだ。しかも発売直後の評判は上々で、当初の人気はオレオを上回っていたという。

普通に考えれば、先に市場を押さえた側が「本家」として長く愛され、後から出てきた模倣品が「二番煎じ」として忘れられていくはずだ。しかしHydroxとオレオの間では、これがまるきり逆転してしまった。後発のオレオがブランド力を伸ばし続け、圧倒的な知名度を獲得していく一方で、先に生まれたはずのHydroxはいつしか市場の隅に追いやられていった。

さらに皮肉なのは、この立場の逆転が単なる「売上の差」では終わらなかったことだ。人々の認識そのものが書き換えられてしまい、先にオレオを知り、それからHydroxの存在を知った世代にとっては、「Hydroxはオレオの真似をして作られた類似品」という印象が定着してしまった。実際の歴史の順序はまったく逆で、真似をしたと疑われるべきはむしろオレオの方だったにもかかわらず、である。元祖でありながら何十年も「パクリ」のレッテルを貼られ続けるというのは、菓子の歴史の中でもかなり皮肉な巡り合わせと言えるだろう。生みの親であるサンシャイン・ビスケッツ社にとっては、自分たちが切り拓いた市場を、後から来た会社にまるごと奪われたばかりか、歴史の記憶まで書き換えられてしまったようなものだ。

ちなみに、先に市場に出ていたHydroxが、オレオに逆転を許してしまった要因は、味や品質の違いだけでなく、「名前」にもあるという。Hydroxという商品名は、多くの消費者にとって食べ物というより洗剤や漂白剤のような響きに聞こえてしまっていたらしい。お菓子を選ぶときに「洗剤みたいな名前」の商品を手に取るのは、なんとなく気が引けるものだ。この語感の悪さが、Hydroxが市場でじわじわと存在感を失っていく一因になったと伝えられている。同じ黒いサンドクッキーでも、片方は「オレオ」という覚えやすく親しみやすい名前で、もう片方は洗剤を連想させる名前だった。このわずかな名付けの違いが、のちの「元祖と模倣品の逆転」という大きな結果につながったのだとしたら、お菓子の世界における名前の重みをあらためて感じさせられる。おいしさや発売時期だけでなく、たった一つの単語の響きが、100年近く語り継がれる立場を決めてしまうこともあるのだ。

## 出典

- [List of common misconceptions about arts and culture #2](https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_common_misconceptions_about_arts_and_culture) — "Hydrox, invented in 1908, predates Oreos by four years and was initially more popular than Oreos."
- [Hydrox Cookie History: How the Cookie Crumbles - Tedium](https://tedium.co/2017/05/09/hydrox-oreo-competition-history/) — "A few years after the launch of Sunshine Biscuits, the company came up with the biscuit sandwich it called Hydrox in 1908—four years before the Oreo."(web)
- [Hydrox: How A Cookie Got A Name So Bad | Science Diction | WNYC Studios](https://www.wnycstudios.org/podcasts/science-diction/articles/hydrox-how-a-cookie-got-a-name-so-bad) — "That sounds like a cleaning product."(major)

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