# 「うちは幽霊屋敷」と自分で宣伝した家が、裁判所に「法的に幽霊屋敷」と認定された

配信日: 2026-07-27(朝7:00配信) / 通巻 第48号 / カテゴリ: 文化

家を買うときに気にするのは、雨漏りやシロアリ、配管の劣化といった「目に見える欠陥」だ。心霊現象のような話は、法律的には契約解除の理由にならない、というのが常識だろう。実際、幽霊は建物の物理的な瑕疵ではないから、買主が「幽霊が出るなんて聞いていない」と言っても普通は通用しない。

ところが1991年、ニューヨーク州の控訴裁判所は、まさにこの「幽霊がいるかどうか」を理由に不動産契約の解除を認めてしまった。しかもその根拠は、心霊現象の有無を科学的に検証した結果ではない。売主自身が、かつて自分の家を全国誌や地元紙にまで売り込んで「幽霊屋敷」として有名にしていたという、実に皮肉な理由だった。

舞台はニューヨーク州ナイアックにある一軒家。所有者のヘレン・アックリー一家は1970年代から、自宅に幽霊が出ると近所や友人に語るだけでなく、全国誌『リーダーズ・ダイジェスト』や地元紙にまで寄稿し、幽霊屋敷として積極的に売り込んでいた。おかげで家は近隣でちょっとした観光名所になり、一家は見学者を案内することさえあったという。

1989年、この家の購入契約を結んだジェフリー・スタンボフスキーは、そんな評判をまったく知らなかった。手付金まで払った後になって近所の人から「あの家は有名な幽霊屋敷だ」と聞かされて仰天し、契約の取り消しと手付金の返還を求めて提訴した。

一審の判断は素っ気ないものだった。幽霊は建物の物理的な欠陥ではなく、そもそも実在を証明できるものでもないのだから、買主は自分の責任でリスクを引き受けるべきだという「バイヤー・ビウェア(自己責任の原則)」を理由に、売主側が勝訴した。

ところが控訴審はこれをひっくり返す。争点になったのは、幽霊が本当にいるかどうかではない。売主が全国誌と地元紙の両方で「うちには幽霊が出る」と自ら公表していた以上、いざ売却する段になって「そんな事実はない」と言い張ることは信義則上許されない、という点だった。判決文には「法律上、この家は幽霊屋敷である」という一節まで刻まれ、買主による契約の取り消しと手付金の返還が認められた。ただし裁判所が認めたのはあくまで契約解除という救済であって、売主が意図的に騙したことを理由にした損害賠償までは認めていない。

自分で公表した事実を、都合が悪くなったからと後から否定することは許されない。この「言ったことの責任」を問う法理が、まさかの心霊現象に適用された珍しい判例として、この事件は今もアメリカのロースクールで契約法・不動産法の定番教材になっている。判決文自体もユーモラスな文体で書かれたことで知られ、堅苦しい法律論争の中に妙な茶目っ気を残す判例として、しばしば法律家の間でも話題にのぼる。

ちなみに、この判決には「ゴーストバスター判決」という愛称がついている。大ヒット映画『ゴーストバスターズ』の記憶がまだ新しかった時代の空気を映した呼び名で、真面目な法律論争に妙な軽さを添えている。

## 出典

- [『幽霊が出る』と自分で宣伝した家、売却後に裁判所から『法的に幽霊屋敷』と認定された](https://blogs.loc.gov/law/2024/10/how-a-house-becomes-legally-haunted-stambovsky-v-ackley-the-ghostbuster-ruling/) — "having reported their presence in both a national publication (Readers' Digest) and the local press"
- [Stambovsky v. Ackley - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Stambovsky_v._Ackley) — "having reported [the ghosts'] presence in both a national publication...and the local press... defendant is estopped to deny their existence and, as a matter of law, the house is haunted."(major)

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