# 「ghoti」と書いて「フィッシュ」と読む、英語スペルの悪ふざけ

配信日: 2026-08-26(朝7:00配信) / 通巻 第108号 / カテゴリ: ことば

英語は表音文字のアルファベットを使っているのだから、綴りを見ればだいたい発音できる——多くの日本人学習者はそう信じて英単語を覚えようとする。ローマ字と同じ感覚で「g」は「グ」、「h」は「フ」と機械的に当てはめれば、そこそこ読めるはずだ、と。ところが、英語にはその期待を粉々にする悪ふざけのような造語がある。「ghoti」だ。声に出して読もうとしても、まともな発音は思い浮かばない。英語を母語とする人でさえ、初めて見た瞬間に正しく発音できることはまずない。しかしこの奇妙な綴り、実は英語話者の間で「フィッシュ」と読む、というのが元々のジョークになっている。

種明かしはこうだ。まず「gh」。laugh(ラフ)や tough(タフ)、enough(イナフ)といった単語では、gh は「フ」(f)の音を表す。次に「o」。women(ウィミン)では、o は「イ」(ɪ)の音になる。最後に「ti」。nation(ネイション)や motion(モーション)では、ti は「シュ」(sh)の音を担う。この三つのパーツ、f・i・sh を綴りの見た目だけ変えてつなぎ合わせると、fish と同じ発音になる ghoti が出来上がる、というわけだ。

つまり ghoti は本物の英単語ではなく、英語の綴りと発音の対応がいかにでたらめかを笑い飛ばすために作られた、いわば「言葉のジョーク」なのだ。同じアルファベットの組み合わせでも、単語によって読み方がまるで違う——英語を学んだことのある人なら誰もが一度はぶつかる理不尽さを、この一語がコンパクトに体現している。英語を学ぶときに感じる「なぜこの綴りでこう読むのか」という素朴な疑問を、ジョーク一つに凝縮した好例と言える。

そもそも英語の綴りがこれほど乱れているのは、歴史の積み重ねのせいだ。古英語の上にフランス語やラテン語由来の単語が大量に流れ込み、発音だけがその後何百年もかけて変化していったのに、綴りのほうは昔のまま据え置かれた単語が数多く残ってしまった。発音のほうは中世末期に起きた「大母音推移」と呼ばれる大規模な音変化でさらにかき乱され、綴りとの溝はどんどん広がっていった。その結果、同じ「gh」でも tough では「フ」の音になり、though では発音されず消え、ghost では語頭の「g」だけが残って読まれるというように、単語ごとにバラバラの読み方をする不思議な文字列になった。ghoti はそんな英語の綴りの「欠陥」を一語に煮詰めたような存在なのだ。

ちなみに、ghoti はしばしば劇作家ジョージ・バーナード・ショーの発案だと紹介される。ショーは英語の綴り字改革を熱心に訴えた人物で、いかにも彼が考えそうな洒落だからだ。ところが英語圏の言語学者による調査では、ショーがこの語を使い始めたとされる時期より前に、同じような gh-o-ti の組み合わせを使った例がすでに存在していたことが指摘されている。つまり「ショー発案説」は、根拠のはっきりしない俗説である可能性が高いというわけだ。有名人の名前がついた瞬間、真偽より先にエピソードのほうが一人歩きしてしまう——ことばの世界にもよくある話らしい。

## 出典

- [Ghoti](https://ja.wikipedia.org/wiki/Ghoti) — "ghoti （フィッシュ）は、英語の綴りの不規則性を示すためにジョークとして作り出された語。"
- [Ghoti - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Ghoti) — "Ghoti is a creative English respelling of the word fish, used to illustrate irregularities in English spelling and pronunciation... 'gh' pronounced /f/ as in 'enough' or 'tough'; 'o' pronounced /ɪ/ as in 'women'; 'ti' pronounced /ʃ/ as in 'nation' or 'motion'."(major)
- ["Ghoti" before Shaw - Language Log](https://languagelog.ldc.upenn.edu/nll/?p=81) — ""Ghoti" is a constructed word meant to represent "fish" using unconventional English letter-sound correspondences: gh pronounced as in "laugh," o as in "women," and ti as in "nation.""(major)

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