# Googleマップのバグが生んだ「存在しない町」に、天気予報まで出ていた

配信日: 2026-09-04(朝7:00配信) / 通巻 第126号 / カテゴリ: 地理

Googleマップを開けば、住所も店の場所も経路も、瞬時に正確な情報が返ってくる。多くの人はそれを疑ったことがないだろう。位置情報はデジタルの世界でもっとも「客観的な事実」に近いものだと、私たちは無意識のうちに信頼している。

ところが2008年ごろ、そのGoogleマップとGoogle Earth自体が、存在しない町を地図上に生み出していたことがある。イギリス・ランカシャー州、オートン近郊の何もない農地の一角に、「アーグルトン」という地名がぽつんと表示されていたのだ。実際には民家も店も一軒もなく、広がっているのはただの畑。にもかかわらず地図上では、道路の名前や境界線まで描き込まれた、れっきとした町として扱われていた。

この奇妙な現象に最初に気づいたのは地元の記者だった。同僚から「地図に見慣れない地名がある」と聞かされ、「これは行ってみるしかない」と現地へ向かったという。しかしたどり着いた先にあったのは、看板も建物もない静かな畑だけ。町の入口を示す標識どころか、人が住んでいた形跡すら見当たらなかった。Googleマップの中だけに存在する、いわば幽霊集落だったのである。

さらに厄介だったのは、この「町」がGoogleマップの中だけの話では済まなかった点だ。Googleの位置情報データを外部サービスが引用していたため、天気予報サイトはアーグルトンの気温や降水確率を毎日更新して表示し続け、周辺の郵便番号地域にある実在の企業までもが「アーグルトン所在」として紹介されていた。カイロプラクティック院や託児所など、実際に営業している事業者が、存在しない町の住民として地図上に住所を持っていたのだ。データの誤りが一つ生まれただけで、それが天気予報からビジネス情報まで、まるごと「実在する町」の体裁を作り上げてしまったことになる。地図を信じて訪ねてきた人がいたとしても、不思議ではない状況だった。

この地名がなぜ生まれたのかについては、Googleが当時利用していた地図データ提供元での入力ミスや変換エラーではないかとみられている。地図業界には、著作権侵害を見つけるためにあえて実在しない架空の地名や道路を紛れ込ませる「トラップストリート」という手法があり、ネット上ではアーグルトンもその一種ではないかという憶測も広がった。だが公式にはっきりした原因が明かされたわけではなく、真相は今も推測の域を出ない。最終的にGoogleは指摘を受けてアーグルトンの表示を削除し、今ではこの地名を地図上で見ることはできない。それでも一時期は検索エンジンや不動産情報サイトにまで「実在する地名」として痕跡が残り、ネット上のちょっとした都市伝説として語り継がれることになった。

ちなみに、この存在しない町の住所を掲げていた事業者の中には、なんと出会い系サービスまで含まれていたという。人っ子ひとりいない畑を拠点に、人と人を引き合わせるサービスが「営業」していたことになる。もし本当にそこで待ち合わせをしていたら、待っていたのは畑だけという、なんとも切ない結末になっていただろう。

## 出典

- [Argleton](https://en.wikipedia.org/wiki/Argleton) — "Argleton was a phantom settlement that appeared on Google Maps and Google Earth but was later removed by Google."
- [Google Maps Mystery: Phantom Town Only Exists Online - ABC News](https://abcnews.com/Technology/AheadoftheCurve/google-maps-mystery-phantom-town-exists-online/story?id=8987800) — "A colleague of mine spotted the anomaly on Google Maps, and I thought 'I've got to go there.'"(major)
- [Argleton, Lancashire: the town that doesn't exist](https://hoaxes.org/weblog/comments/argleton_lancashire_the_town_that_doesnt_exist) — "chiropractors, nurseries and even dating agencies are listed under Argleton"(web)

## こちらもちなみに

- [Scunthorpe問題——地名がNGワード扱いされた事件、AI時代にも再燃中](https://chinamini.app/a/2026-07-07/morning.md)
- [ロンドンのタクシー運転手試験は、脳の形が変わるほど難しい](https://chinamini.app/a/2026-08-14/morning.md)
- [「うちは幽霊屋敷」と自分で宣伝した家が、裁判所に「法的に幽霊屋敷」と認定された](https://chinamini.app/a/2026-07-27/morning.md)

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