# 2011年12月30日が存在しない国

配信日: 2026-09-12(朝7:00配信) / 通巻 第142号 / カテゴリ: 地理

カレンダーから一日を消す、と聞いて、どのようなことを思い浮かべるだろうか。うるう年の調整か、あるいは暦の改暦にまつわる遠い昔の話か——おおむね、そんなところではないだろうか。少なくとも現代の国家が、来週の金曜日を丸ごと無かったことにする、という話ではない。当たり前の話である。

ところが、そのイメージを覆す出来事が、2011年の南太平洋で実際に起きている。サモアという島国では、2011年12月30日という日が存在しない。木曜日の29日が終わった瞬間、次に来たのは土曜日の31日だった。金曜日は、丸ごと飛び越されたのだ。

理由は、国際日付変更線である。線をまたぐかどうかで日付が丸一日ずれるこの線が、サモアにとっては商売の邪魔になっていた。当時のサモアは線の東側、つまりアメリカ側にいて、主要な貿易相手であるニュージーランドやオーストラリアとは日付がずれていた。オークランドとは23時間、シドニーとは21時間の差である。サモアが金曜に働いている頃、取引先はもう土曜。サモアが日曜に教会にいる頃、シドニーやブリスベンでは商談が始まっている。営業日が取引先と噛み合わない、という状態だった。

そこでサモア政府が選んだ解決策が、線の反対側へ引っ越すことだった。といっても島が動くわけではない。動くのは線のほうである。国際日付変更線の位置を定める国際法は存在せず、各国が自国の都合で決めた法律の集まりとして線が引かれている。だから線の近くにある国は、誰の許可も要らずに自分の側を変えられる。2011年12月29日の木曜、時計が真夜中を打つと同時に、線はサモアの反対側へ跳んだ。その過程で、金曜日が消えた。

消えたのは日付だけではない。その日出勤するはずだった人々の労働も一緒に消えた。そこで政府は、存在しなかった金曜日についても、雇用主は従業員に給与を支払わなければならないと定めた。逆に、その週サモアのホテルに泊まっていた客は、存在しない一日の宿泊代を請求されずに済んでいる。国民は歓声を上げ、サイレンが鳴り、真夜中の空に花火が上がった。世界で最後に新年を迎える国だったサモアは、この一夜で、世界で最初に新年を迎える国になったのである。

ちなみに、サモアが日付変更線をまたいだのは、これが初めてではない。1892年、当時の主な貿易相手だったアメリカ西海岸に合わせるため、サモアは逆向きに線をまたいでいる。このときは一日が消えるのではなく、一日増えた。増やす日として選ばれたのは7月4日——アメリカの独立記念日で、サモアの人々は独立記念日を二回祝ったのだ。

## 出典

- [ある国が「木曜日の次はいきなり土曜日」というカレンダーを一夜で実行した](https://nowiknow.com/the-day-that-never-happened/) — "Samoa's main trading partners, New Zealand and Australia, were on the other side of the International Date Line"
- [Samoa skips Friday in time zone change - ABC News](https://www.abc.net.au/news/2011-12-30/samoa-skips-friday-in-time-zone-change/3753350) — "The Samoan clock has now been reset, wiping Friday December 30 off the calendar and sending the country straight into Saturday. ... Employers must still pay staff for the Friday that never was."(major)
- [Samoa to skip Friday, lose December 30th 2011 forever - CSMonitor.com](https://www.csmonitor.com/World/Global-News/2011/1229/Samoa-to-skip-Friday-lose-December-30th-2011-forever) — "we do a lot more business with New Zealand and Australia, China, and Pacific Rim countries"(major)

## こちらもちなみに

- [農作物を荒らすエミューに、オーストラリア軍は負けた](https://chinamini.app/a/2026-07-16/morning.md)
- [沖縄の離島では、円ではなく「砂糖の引換券」が流通していた](https://chinamini.app/a/2026-09-18/morning.md)
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