# 世界一のコーヒー大国ブラジル、その始まりは花束に隠された密輸だった

配信日: 2026-09-13(朝7:00配信) / 通巻 第144号 / カテゴリ: 食

ブラジルと聞いて、まず何を思い浮かべるだろうか。——おおむね、サッカーとカーニバル、そしてコーヒーではないだろうか。実際、この国はいま世界のコーヒーのおよそ3分の1を生産する、文字どおり世界一のコーヒー大国である。

ところが、そのコーヒーはもともとブラジルに生えていた植物ではない。アメリカ大陸に自生していなかったコーヒーは、ある外交官の手によって外から持ち込まれたのだ。

1727年、ポルトガル人の中佐フランシスコ・デ・メロ・パリェッタは、国境紛争の調停という真面目な外交任務で隣の仏領ギアナに派遣されている。当時のコーヒーは、ヨーロッパ列強が互いにスパイを送り合って苗を盗むほどの戦略物資だった。ギアナの総督は種の国外持ち出しを頑として認めない。正攻法では手に入らない。そこでパリェッタが目をつけたのは、総督の妻だった。

伝説の伝えるところでは、パリェッタは彼女を口説き落とすことに成功する。そして帰国前夜の晩餐会で、彼女は別れの贈り物として美しい花束を彼に手渡した。その花束には、コーヒーの苗が忍ばせてあったという。国境交渉に来た将校が、色恋の見返りに、花束というラッピングで戦略物資を国外に持ち出したのだ。

パリェッタはその種をブラジルのパラーに植え、コーヒーを育てた。1770年にはリオデジャネイロまで広がり、1840年代には世界最大の生産国となる。1920年代には世界のコーヒーの80%を供給する、ほぼ独占状態にまで達した。ひとつの花束から始まったことになっている産業が、国の経済そのものを塗り替えたのである。

ただし、この話には諸説あり、出典も一貫して「伝説によれば」と断りを入れている。パリェッタが1727年にパラーで最初のコーヒーの木を植えたことは記録されているが、口説きと花束の部分は、あくまで言い伝えにすぎない。

ちなみに、この手の武勇伝が残っているのは、当人たちが自分で語り広めた面がある。同じ時代にフランス領マルティニークへコーヒーを運んだフランス人将校ド・クリューも、船上で乏しい水を苗と分け合い、海賊に襲われかけ、嵐に見舞われたという航海記を自ら雑誌に書き送っている。コーヒーの拡散史がここまで劇的なのは、スパイたちが揃って自己PR上手だったからでもあるのだ。

## 出典

- [ブラジルが世界一のコーヒー大国になったきっかけは「不倫」だった(諸説あり)](https://modernfarmer.com/2013/08/old-time-farm-crime-the-coffee-spies-of-the-1600s/) — "Palheta allegedly befriended (some sources say seduced) Marie-Claude de Vicq de Pontgibaud, the wife of the colonial governor."
- [Coffee production in Brazil - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_production_in_Brazil) — "Palheta was sent to French Guiana on a diplomatic mission to resolve a border dispute. On his way back home, he managed to smuggle the seeds into Brazil by seducing the governor's wife who secretly gave him a bouquet spiked with seeds."(major)
- [Brazilian coffee, from seduction and slavery to world domination – Coffee with the Queen](https://thequeenbean.blog/2019/04/09/brazilian-coffee-from-seduction-and-slavery-to-world-domination/) — "According to legend, de Mel Palheta seduced the coffee-coveting governor's wife to get his hands on some precious seeds, which he then smuggled out of the country in a bouquet of flowers."(web)

## こちらもちなみに

- [コカ・コーラが秘伝のレシピを、あえて特許にしない理由](https://chinamini.app/a/2026-09-12/evening.md)
- [ペプシが持っていた？「世界6位の海軍」](https://chinamini.app/a/2026-07-05/evening.md)
- [かつてアメリカでは赤ちゃんを郵便で送れた](https://chinamini.app/a/2026-08-27/morning.md)

---

本記事は出典に基づいて執筆していますが、諸説ある話題を含む場合があります。
正規URL(HTML版): https://chinamini.app/a/2026-09-13/morning
