# テトリスの作者は、10年以上ほぼ一銭も受け取れなかった

配信日: 2026-09-23(朝7:00配信) / 通巻 第163号 / カテゴリ: 歴史

ソ連の研究所に、コンピューターの性能を測るのが仕事の男がいた。新しい機械が届くたび、どれくらい動くかを確かめる小さなプログラムを書く。アレクセイ・パジトノフは、それをゲームを作る口実にしていた。

そうして生まれたのがテトリスだ。子どもの頃に遊んだパズル「ペントミノ」——12種類の形を木箱にきっちり収める遊び——を思い出し、7種の図形を落とすゲームを作ったのだ。開発に使ったエレクトロニカ60には描画機能すらなく、ブロックはキーボードの文字で描くしかなかった。それでも彼は、仕事中に忙しいふりをして遊び続けてしまうほどハマった。

ここまでなら億万長者のゲームクリエイター誕生物語である。ところがパジトノフは、このゲームで10年以上、ドルもルーブルも受け取っていない。

理由は、彼がソ連科学アカデミー傘下の研究所の職員だったこと。当時のソ連では、アイデアは国のものだった。個人が西側企業と直接取引すれば刑務所行きもありうる。権利の所在をめぐる混乱が起きた際、彼は「全てを円滑に進めたい」と考えて、テトリスの権利を10年分、科学アカデミーのコンピューターセンターに譲渡してしまう。

その10年のあいだに、テトリスは世界を飲み込んだ。ゲームボーイ版だけで3500万本。家庭用ゲーム機の権利をめぐって任天堂とアタリが法廷で殴り合い、敗れたアタリは製造済みのカートリッジを丸ごと無駄にした。ソフトの輸出はソ連の国営企業が仕切り、世界中で金が動いた。作った本人の取り分だけが、ゼロのままだった。

権利が彼の手に戻ったのは、譲渡の合意が失効した1995年ごろ。ソ連はすでに消滅し、彼はモスクワからシアトルへ移り住んでいた。翌1996年、ヘンク・ロジャースとともにザ・テトリス・カンパニーを設立し、ようやく自分のゲームから使用料を受け取り始める。発売から10年以上が過ぎていた。

悔しくなかったのか、と聞くと、どうもそうでもないらしい。最初は大して稼げなかったが幸せだった、いちばんの優先順位は人々が自分のゲームを楽しむのを見ることだったから——本人は後年、そう振り返っている。

ちなみに、「テトリス」という名前は、ギリシャ語で4を意味する「テトラ」と、彼の趣味だったテニスを掛け合わせた造語である。

## 出典

- [Alexey Pajitnov - Wikipedia](https://en.wikipedia.org/wiki/Alexey_Pajitnov) — "Because he was employed by the Soviet Academy of Sciences, Pajitnov did not receive royalties."(major)
- [Tetris Creator Alexey Pajitnov Initially Received No Royalties for the Game](https://www.biography.com/movies-tv/a43498846/tetris-creator-alexey-pajitnov-received-no-royalties-initially) — "Pajitnov, 67, didn't earn a dollar—or a ruble—for his own game for the first decade after its release."(major)
- [テトリス 世界を席巻したソ連の「マインドゲーム」 - CNN.co.jp](https://www.cnn.co.jp/style/design/35145506.html) — "所有権やソースの問題が持ち上がった際、私は全てを円滑に進めたいと思って、ソ連科学アカデミーのコンピューターセンターに１０年分の権利を譲渡した"(major)

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