# 「恵比寿」の地名より先にビールがあった

配信日: 2026-10-28(夕18:00配信) / 通巻 第229号 / カテゴリ: 地理

「恵比寿」は、東京都渋谷区の地名だ。七福神の一柱である恵比寿様と同じ名前なのだから、由来はその神様か、祀っている古い神社だろう。そう想像するのは、地名としてはごく自然なことである。

しかし、先にあったのはビールだった。現在の恵比寿ガーデンプレイスの場所には、かつてサッポロビールの前身である日本麦酒醸造の工場があった。そこで1890年に発売されたビールが「惠比壽麦酒」である。商売繁盛の神にあやかって付けた商品名だ。この時点で、恵比寿という地名は周辺のどこにもない。

駅は、そのビールを運ぶために生まれた。1901年2月25日に開業したのは、民営の日本鉄道が運営する貨物専用駅で、仕事はヱビスビールの出荷だった。所在地は豊多摩郡渋谷村大字下渋谷。つまり、駅名だけが「恵比寿」で、土地の名前はまだ下渋谷のままである。1906年に300メートルほど移転して旅客輸送を始めると、駅の周りが「恵比寿」と呼ばれ始めた。そして1928年には、地名としても正式に採用される。商品名が駅名になり、駅名が地名になったのだ。

恵比寿様を祀る神社も、やはり後から来た。サッポロビール本社脇に建つ恵比寿神社が創建されたのは、ビールが発売されたあとの1893年。日本麦酒醸造が、恵比寿の総本宮である兵庫の西宮神社から勧請したものだ。駅の西にあるもう一つの恵比寿神社も、もともとの社名は天津神社だった。1959年に区画整理で移転する際、恵比寿を合祀して社名を改めている。二つの神社の由緒をたどっても、行き着く先はヱビスビールである。

なぜこの土地にビール工場だったのか。玉川上水から分かれた三田用水が流れており、その水が醸造に適していたからだ。工場は1988年に千葉県船橋市へ移るまでこの地で操業を続け、跡地が恵比寿ガーデンプレイスになった。豊田や日立のように企業名が地名になった例はあるが、一本の商品名が駅名を経て地名にまで育つのは、全国でもとても珍しい。

ちなみに、恵比寿駅の発車メロディーは映画『第三の男』のテーマ曲だが、これもヱビスビールのコマーシャルソングである。

## 出典

- [「恵比寿」という地名、七福神より先にビールがあった](https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c13308/) — "恵比寿駅の駅名は、サッポロビールの商品『ヱビスビール』に由来する。商売繁盛の神である恵比寿様にあやかってビールの商品名とし、それがやがて駅名につながったという珍しいケースなのである。"
- [恵比寿 (渋谷区) - Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%B5%E6%AF%94%E5%AF%BF_(%E6%B8%8B%E8%B0%B7%E5%8C%BA)) — "1891年（明治24年）には、ビールの運搬のために日本鉄道品川線（現在の山手線）に貨物駅が開設され、『恵比寿停留所』と命名された"(major)
- [「恵比寿」の地名の由来と歴史](https://chimei-yurai.com/ebisu/) — "ビール出荷専用の駅として商品名から「恵比寿停留場」という駅が出来ました。恵比寿ビールの工場があったことに因んでいる"(web)
- [「恵比寿」の地名の由来](https://zatsuneta.com/archives/000370.html) — "七福神の恵比寿様に由来するサッポロビールの『ヱビスビール』に因み、1906年（明治39年）にヱビスビールを輸送するための駅として『恵比寿駅』ができ"(web)

## こちらもちなみに

- [回転寿司は、ビール工場のベルトコンベアから生まれた](https://chinamini.app/a/2026-09-23/evening.md)
- [「ホッチキス」は正式名称ではなく、日本へ最初に輸出した会社の名前](https://chinamini.app/a/2026-09-22/morning.md)
- [Bluetoothという名称は、千年前の王に由来する](https://chinamini.app/a/2026-09-21/morning.md)

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