# ゴキブリのミルク、牛乳の3倍のエネルギーを持っていた

配信日: 2026-10-29(朝7:00配信) / 通巻 第230号 / カテゴリ: 生き物

ゴキブリと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。台所の隅を走り回る、できれば視界に入れたくない虫——そんなイメージではないだろうか。害虫の代表的存在であり、我々との共通点など見当もつかない存在だ。

ところが、そのイメージから大きく外れた一種がいる。パシフィック・ビートル・ゴキブリは、知られている限り唯一の胎生のゴキブリだ。卵を産み落とさず、母親の体内で卵を育て、子を直接産む。哺乳類とよく似たやり方である。

体内で育てるには、子に栄養を送らなければならない。この種の卵には卵黄がほとんど入っていないので、その役目は親が担うことになる。そこで母親は、胎内からタンパク質に富んだ液体を分泌する。子はそれを飲んで育つ。昆虫が自分の子に「ミルク」を与えているのだ。

面白いのはその先だ。飲み込まれた液体は、子の腸の中で固まって結晶になる。液体のまま栄養として使われるのではなく、飲んだあとに固形へと姿を変えるわけだ。2016年、国際的な研究チームがX線結晶構造解析でこの結晶を原子レベルまで調べ上げた。結晶はタンパク質が脂質を抱え込み、隙間なく密に詰まった構造をしていた。

そして熱量を見積もってみると、結晶1粒は同じ重さの牛乳の3倍以上のエネルギーを持っていた。ぎゅうぎゅうに詰め込まれているので、小さな体積に大量の栄養が収まる。胚にとっては、効率の良い弁当のようなものだ。研究チームはこの結晶が脂肪・糖・タンパク質を豊富に含み、とりわけ必須アミノ酸に富むことも示している。

この研究は、2026年のイグノーベル化学賞を受賞した。イグノーベル賞は「人々を笑わせ、そして考えさせる」研究に贈られる。ゴキブリのミルクという題材は、たしかに笑いを誘う。だが受賞者の一人は、不思議な問いこそが面白い発見につながるのだと語っている。実際、この結晶の異様な安定性は、新しいタンパク質を設計する手がかりとして、今も研究室で調べられている。

ちなみに、この結晶が報じられた当初は「次のスーパーフード」として話題になった。栄養価だけを見れば確かに桁違いだが、ゴキブリ一匹から搾れる量を考えれば、朝食の牛乳が置き換わる日は遠い。

## 出典

- [ゴキブリの「ミルク」結晶、牛乳の3倍のエネルギーを持っていた](https://www.medicaldaily.com/cockroach-milk-ig-nobel-protein-crystals-480126) — "one crystal contains more than three times the energy of an equivalent mass of dairy milk."
- [Highlight report: Diploptera functata (cockroach) milk as next superfood (PMC/NCBI)](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6123606/) — "This is three times (232 kcal per 100 g or 37 %) the energy content of milk produced by buffalo's and other mammals as shown in Figure 1."(primary)
- [Cockroach milk research earns 2026 Ig Nobel Prize in Chemistry — Purdue University Dept. of Biological Sciences](https://www.bio.purdue.edu/news/articles/2026/cockroach-milk-research-earns-2026-ig-nobel-prize-in-chemistry.html) — "A single crystal was estimated to contain more than three times the energy of an equivalent mass of dairy milk"(primary)

## こちらもちなみに

- [ゆで卵を"生に戻した"化学者](https://chinamini.app/a/2026-09-19/morning.md)
- [真空の宇宙に10日間放置しても、水をかけたら生き返って卵まで産んだ生き物](https://chinamini.app/a/2026-07-19/morning.md)
- [吸血コウモリ、イメージと違って律儀な奴だった](https://chinamini.app/a/2026-08-07/evening.md)

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