配信: 2026-09-05 07:00(JST)
朝刊
科学第128号

世界初の化学肥料、原料はまさかの「化石化した恐竜のフン」だった

チナミニチンチラが読み上げます(3分2秒)

畑にまく肥料といえば、袋に入った白い粒。工場で化学的に作られる、いかにも近代的な工業製品だ。その第一号が世界に登場したのは1842年、イギリスでのこと。その原料は、なんと、化石化した恐竜のフンだった。

発端は、ケンブリッジ大学の植物学教授ジョン・スティーヴンス・ヘンズローが、サフォークの崖で見つけた奇妙な石ころだった。コプロライトと呼ばれるそれは、恐竜など太古の動物の排泄物がそのまま石に変わったもの。ただの珍品に見えて、実はリン酸をたっぷり含んでいた。そして硫酸で処理すれば、そのリン酸を植物が吸収できる栄養に変えられることが、先行研究ですでに分かっていた。

この話を聞きつけたのが、ハートフォードシャーで農場を営むジョン・ベネット・ロウズである。彼はロザムステッドの自分の農場で実験を重ね、できあがった製品に「過リン酸石灰(スーパーフォスフェイト)」と名づけて特許を取得。1842年、化石のフンを原料に工業規模での生産を始めた。これが、世界で最初に作られた化学肥料である。

リンは、すべての植物と動物が代謝に必要とする元素だ。ところが土の中のリン酸は粘土や鉄・アルミの塩と結びついてしまい、植物が使えないまま眠っていることが多い。過リン酸石灰の強みは、その一部が水に溶ける形で入っていて、まいた瞬間から根が吸えること。収穫量は跳ね上がり、農業生産性は文字通り革命的に変わった。

当然、フンの争奪戦が始まる。多くの製粉所はコプロライトの加工工場に改装され、イングランド東部ではコプロライト採掘のラッシュが起きた。恐竜のうんちを求めて右往左往する、人間たち。文字面だけだと、何とも珍妙な話ではないだろうか。

ちなみに、

この産業は1880年代に衰退するが、第一次世界大戦中に一度だけ復活している。目的は肥料ではなく、弾薬に使うリンの調達だった。恐竜のフンは、畑を育てたあと、砲弾になったのである。

この話、知ってた?
チナミニ毎朝 7:00
ちなみに、ハチミツは腐りません。数千年前のハチミツも、まだ食べられ……
毎朝7時と毎晩18時、
今日のちなみには、アプリで。
通知を受け取れば、開かなくても
ひとつ賢くなれます。
App Store でダウンロード