配信: 2026-09-07 07:00(JST)
朝刊
地理第132号

海鳥のフンで世界2位の金持ち国になった島国

チナミニチンチラが読み上げます(3分42秒)

豊かな国には、その理由がある。石油が出るか、金融の中心地になるか、観光地として当たるかなど。だが南太平洋にぽつんと浮かぶ島国ナウルが選んだ道は、そのどれでもなかった。輸出品は、海鳥のフンである。

面積わずか21平方キロメートル、オーストラリアとハワイの間に浮かぶこの小さな島には、太古の昔から海鳥が糞を落とし続けてきた。それが何千年もかけて積もり、固まり、純度の異常に高いリン鉱石の層になった。リンは肥料に欠かせない原料である。つまりナウルの地面そのものが、世界中の農地が欲しがる資源の塊だった。

そして1970年代、リン鉱石の価格が高騰し、この島の一人当たりGDPは推定5万ドルに達した。当時これを上回るのは産油国のサウジアラビアだけ。世界で二番目に豊かな国の誕生である。潤沢すぎる資金は海の向こうにも溢れ出し、政府はメルボルンの一等地に「ナウル・ハウス」を建てた。当時のメルボルンで最も高いビルを、人口一万人あまりの島国が所有していたことになる。

問題は、リン鉱石の持つ「積もるのに何千年もかかったものが、掘るのは一瞬で済む」という特徴だった。リン鉱石はどんどん掘り尽くされ、1990年代には輸出量が大きく減少。政府は大急ぎで新たな収入源を探すが、急ごしらえの施策が簡単に当たるほど経済は甘くない。例えば、政府がたどり着いた先のひとつである、ロンドンの劇場街について見てみよう。1993年、レオナルド・ダ・ヴィンチとモナ・リザが恋に落ちるミュージカルに出資し、百人を超える要人を引き連れて初日に乗り込んだ。公演は一か月ももたずに幕を下ろし、島は数百万ドルを失った。このような投資の失敗と汚職が原因で、2000年代には借金まみれになり、あのナウル・ハウスも手放している。

失ったのは金だけではない。掘り尽くされた島の内陸には、むき出しになったサンゴの鋭い柱が林立する荒地だけが残り、島の8割が農業も居住もできない土地になった。豊かさの源だった地面が、そのまま国土から差し引かれたわけである。人々は残ったわずかな海岸沿いに身を寄せて暮らしているが、その海岸線もまた、海面上昇に脅かされている。

ちなみに、

ナウルはこの荒廃の責任を問うてオーストラリア政府を国際司法裁判所に訴え、1993年に和解している。支払われたのは20年分割で1億2000万豪ドル。現在もナウルは、オーストラリアを含む国際的な支援金に深く依存する構造を抜け出せていない。

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