とある動物は、なぜか必ず「四つ子」を産む
双子はときどき生まれる。三つ子ともなればニュースになるレベルの偶然だ。ましてや、生まれてくる子が全員「四つ子」だなんて、人間ではまず起こりえない。
ところが、ある動物にとってはこれが当たり前どころか、ほぼ100%確実に起きる出来事だ。南北アメリカに広く分布するココノオビアルマジロは、妊娠するとほぼ必ず、遺伝的に同一な四つ子を産む。しかも毎回、例外なく、である。
仕組みはこうだ。母体は一度の妊娠で受精させる卵をたった一つしか用意しない。しかしその受精卵は着床する前に真っ二つに分裂し、さらにその二つがそれぞれもう一度分裂する。結果として生まれるのは、同じ一つの受精卵から生まれた4つの胚――つまり遺伝情報が完全に一致する「一卵性四つ子」だ。この4つの胚は一つの胎盤を共有しながら育っていく。
人間の一卵性双生児は、一つの受精卵がたまたま二つに分かれることで生まれる、偶然で奇跡的な現象だ。発生率は妊娠全体のごく一部にすぎず、次に生まれる子が双子になるかどうかは基本的に予測できない。ところがココノオビアルマジロの場合、この「分裂」は偶然でも奇跡でもなく、繁殖のたび確実に起きることが前提になっている仕組みそのものなのだ。
こうした「受精卵が必ず分裂して複数の胚になる」性質は、専門用語で絶対的多胚性(obligate polyembryony)と呼ばれる。研究者によれば、この性質がここまで徹底して確認されている脊椎動物は、地球上でこの種だけだという。
この特異な繁殖戦略は、生物学者にとってただの珍現象ではなく、格好の研究材料でもある。一卵性双生児は「まったく同じ遺伝子を持つ人間同士を比較できる」貴重な存在として、遺伝と環境のどちらが性格や体質を決めるのかを調べる研究の対象として長年重宝されてきた。ただしヒトの一卵性双生児は基本的に2人一組しかいない。その点、ココノオビアルマジロなら同じ遺伝子セットを持つ個体が一度に4匹、しかも同じ子宮の中でほぼ同じ栄養環境を共有しながら育つ。遺伝要因と環境要因を切り分けたい研究者にとって、これほど都合の良いサンプルはなかなか無い。実際、同じ遺伝子を持つはずの四つ子であっても、成長すると個体ごとに違いが生まれることがあり、これは遺伝子だけでは説明できない要因の存在を示す手がかりとして研究者の関心を集めている。
ではなぜアルマジロだけがこんな繁殖方法にたどり着いたのか。実のところ、はっきりした答えは出ていない。一つの卵を分割してから育てる方が、複数の卵をそれぞれ受精させて育てるより母体への負担が少なく効率的だから、という見方もあるが、決定的な証拠があるわけではない。たまたま採用した繁殖戦略が、この種にはうまくはまり続けている、というのが今のところの実情に近いのかもしれない。
四つ子は遺伝的に完全なコピーなので、性別まで4匹ともそろって同じになる。オスだけの四兄弟か、メスだけの四姉妹か――生まれる前から、すでに決まりきっているのだ。