配信: 2026-09-01 18:00(JST)
夕刊
数字第121号

サッカーには、149-0という衝撃的な公式戦がある。

チナミニチンチラが読み上げます(4分24秒)

サッカーの試合で「大差」といえば、0-5、大崩れして0-8あたりだろうか。プロ同士なら二桁得点すら滅多に起きない。ところがギネス世界記録が「サッカーにおける最大得点差の試合」として認定しているスコアは、149-0である。

2002年10月31日、マダガスカルの国内リーグ、THBチャンピオンズリーグの決勝ラウンド最終節。ASアデマがSOレミルヌを149-0で下した。ただし、アデマの選手はほとんどボールに触れていない。149点はすべて、負けたSOレミルヌ自身が自陣ゴールへ蹴り込んだオウンゴールだった。

レミルヌは弱小クラブではない。前年2001年にリーグ初優勝を飾った王者であり、代表クラスの選手を抱える国内屈指の実力者だ。しかもアデマとは、首都アンタナナリボを本拠とするライバル同士である。

ではなぜそんな事がおきたのか。発端は前節にあった。2連覇のかかった一戦でレミルヌはDSAアンタナナリボに2-1とリードしていたが、終盤、主審が極めて議論の余地のあるPKを与える。これを決められて2-2の引き分け。この瞬間にアデマの初優勝が確定し、レミルヌの連覇は消えた。彼らにとって、最終節はもう消化試合となってしまったのだ。

怒ったレミルヌは最終節のキックオフ後、ボールを持った瞬間に抗議を始めた。自陣ゴールへ蹴り込む。センターサークルからやり直し、また蹴り込む。それを149回、平均36秒に1点というペースで続けたのだ。アデマの選手は困惑した表情で棒立ちのまま、相手の自傷行為を見守るしかない。主審も試合を打ち切らず、記録が塗り替わっていくのを見ているだけだった。現地報道によれば、観客はチケット代の払い戻しを求めてブースに殺到したという。

協会の処分は素早かった。抗議を仕組んだラツィマンドレシ・ラツァラザカ監督は3年間の停職に加え、同じ期間スタジアムに立ち入ることも禁じられた。キャプテンやゴールキーパーを含む4選手にも出場停止とスタジアム入場禁止。両クラブの残る選手全員には戒告が出された。一方、主審は無処分である。事態は彼の手に負えるものではなかった、というのが理由だった。

ペナルティはそれだけで終わらない。レミルヌはリーグ2位に与えられるCAFチャンピオンズリーグ予選の出場権を失い、協会は2002年シーズンの全成績を無効とした。そしてクラブ自体も、2006年に消滅している(この試合との直接の因果は公式には示されていない)。選手たちはその後、この試合についてほとんど語らなかった。

ちなみに、

この149-0が塗り替えたのは1885年のスコティッシュカップでアーブロースFCがボン・アコードFCを下した36-0という、117年間も残り続けた記録だった。また、日本サッカーにおける最多得点かつ最大得点差は、2015年の高円宮杯U-18サッカーリーグ群馬県3部、桐生第一高校対ぐんま国際アカデミー高等部の53-0だ。どれもすごい記録だが、レミルヌの前では霞んでしまう。それほどまでに、サッカー界では珍しい事件だったのだ。

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