配信: 2026-09-08 18:00(JST)
夕刊
第135号

値上げを提案したCEOに、コストコ創業者は「殺すぞ」と言った

チナミニチンチラが読み上げます(3分0秒)

アメリカの物価はこの40年で大きく上がった。そんな中でも、全く値段を上げずに安価を維持し続けているものがある。コストコのフードコートにある、ホットドッグとドリンクのセットだ。1985年の登場以来、価格は1.5ドルのまま。40年、一度も値上げしていない。

一見、企業努力を示す素晴らしい話のようだが、この値段を守るために社内で交わされた会話は、企業の美談というにはいささか物騒である。

2018年、当時CEOだったクレイグ・ジェリネックが地元誌のインタビューで打ち明けた。彼はかつて、共同創業者のジム・シネガルに直談判している。1.5ドルでは売れない、大赤字だ、と。返ってきた答えは、なんと、経営判断でも数字の議論でもなかった。

「ホットドッグを値上げしたら、お前を殺す。自分で何とかしろ。」

回答に面食らいつつもジェリネックは、本当に何とかした。値札には一切手をつけず、代わりに原価のほうを作り替えたのである。他社から仕入れていたホットドッグをやめ、ロサンゼルスに自社の製造工場を建設。のちにシカゴにも工場を増やし、看板商品は相応の利益を出せるようになったという。上司の恫喝ひとつで工場が二つ建つ。ずいぶん乱暴な意思決定ではないだろうか。

米メディアの試算では、インフレを織り込めば本来4.25ドル以上つけていい計算になる。それでも1.5ドルは動かない。だがその値段が功を奏し、結果として2019年には約1億5100万セットが売れ、売上は約2億2650万ドルに達した。安すぎる看板メニューは、看板としてきっちり機能しているのだ。

ちなみに、

この異常な執着には出どころがある。もう一人の共同創業者ジェフリー・ブロットマンが人生で最初に手がけた商売は、1970年代後半にシアトルで兄弟と営んだホットドッグの屋台だった。1983年にシネガルと組んでコストコを立ち上げたとき、二人はこのセットの値段を上げないと誓ったという。コストコの原点は、そもそもホットドッグだったのだ。

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