配信: 2026-09-09 18:00(JST)
夕刊
生き物第137号

カメレオンが色を変えるのは、周りに溶け込むためではない

チナミニチンチラが読み上げます(3分33秒)

カメレオンと聞いて、どんな姿を思い浮かべるだろうか。葉に止まれば緑に、幹に移れば茶色に。背景に合わせて体を溶け込ませる擬態の達人——そんなところではないだろうか。図鑑でもテレビでも、だいたいそう紹介されてきた生き物である。

ところが、実際のカメレオンはそのイメージと大きく乖離している。カメレオンの皮膚は、カモフラージュのためだけに備わったものではないのだ。そもそも、どんな背景にでも合わせられるわけでもない。彼らが色を変える理由は、なんと多くの場合、自身の気分を仲間に伝えるためなのである。

決定打になったのは、2008年に発表された南アフリカのコビトカメレオンの研究だ。21の系統を比べたところ、色を変える能力が高い種ほど、オス同士の争いや求愛で派手な体色に変化した。しかも派手さの物差しは人間の目ではない。この研究では、カメレオン自身の視覚と、天敵である鳥の視覚をモデル化して計測している。つまり体色変化の能力は、天敵から隠れるためというよりは、仲間とコミュニケーションをとるために進化した、と言えそうだ。進化が選んだのは、背景に紛れる能力ではなく、背景から浮き上がる能力だったのだ。

具体的に深掘りしてみよう。エボシカメレオンのオス同士の対決を撮影して体色を計測した研究では、明るい縞を出した個体ほど相手に向かって前進しやすく、頭の色が鮮やかで、しかもその色が速く変わる個体ほど勝ちやすかった。色が本気度の申告になっているのである。おかげで多くの対決は、噛みつきも頭突きもないまま、色の変化が大きい方の勝ち、というかたちで決着する。派手に光ることが、結果として流血を減らしているのだ。色の見せ合いで殴り合いを回避する生き物。ずいぶん平和的な決着のつけ方ではないだろうか。

色が変わる仕組みそのものも凝っている。皮膚の細胞には微小な結晶が格子状に並んでおり、落ち着いているときは密に詰まって青い波長を反射する。興奮すると格子がゆるみ、黄色や赤といった色が反射されるようになる。パンサーカメレオンはこの切り替えを、わずか1〜2分でやってのける。

ちなみに、

この結晶の層はもう一段深いところにもある。深層の結晶は粒が大きく並びも乱れていて、こちらは赤外線を反射する。強い日差しの降り注ぐ低緯度地方で、体に熱がこもりすぎないようにするための、生まれつきの日よけである。体色変化の能力は、体温調整にも役立っているのだ。

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