数字第165号朝刊

暗証番号が4桁なのは、発明者の妻が6桁を覚えられなかったから

チナミニチンチラが読み上げます(3分16秒)

ATMの前に立って、4桁の暗証番号を打ち込む。この「4」という数字には、セキュリティ上の綿密な根拠があると思う人も多いだろう。総当たりで破られる確率、人間が記憶できる限界、コストと安全性の釣り合い——専門家が計算しつくした末の最適解だ、と。

実態は違う。4桁になったのは、発明者の奥さんが6桁を覚えられなかったからである。

1967年6月27日、ロンドン北部エンフィールドのバークレイズ銀行の支店で、ビロードのカーテンが引かれ、世界初のATMがお披露目された。当時、銀行は午後3時半に閉まる。それ以降は現金が引き出せない。紙幣メーカー、デ・ラ・ルー社のジョン・シェパード=バロンは、土曜の朝に銀行に行きそびれて現金を下ろせなかった経験から、風呂につかりながらこの問題を考えていた。そこで浮かんだのが、板チョコの自動販売機だった。チョコの代わりに現金を出せばいい——発想の原点はそれだけである。

しかし、お金を扱うからには、機械が「この人は本人だ」と確かめる手段が要る。軍隊出身のシェパード=バロンは、自分の軍番号を思い出して6桁を提案した。そして自宅の食卓で、妻のキャロラインに試してもらう。返ってきた答えは、覚えられるのはせいぜい4桁まで、だった。

それで6桁案は消えた。本人ものちにBBCの取材で、妻のおかげだと語っている。実際、ATMが世界中に広がるにつれて4桁はそのまま国際的な標準となり、今や世界には170万台を超えるATMがある。台所のテーブルでの一言が、半世紀以上、地球上のほぼ全員の記憶上の桁数を決めてしまったことになる。

ちなみに、

この初代機にはキャッシュカードが存在しなかった。当時まだその技術が発明されていなかったからだ。代わりに客が機械に入れていたのは、放射性物質の炭素14をしみ込ませた小切手型のトークンである。機械がその放射線を検知し、打ち込まれた暗証番号と照合する仕組みだった。安全性についてシェパード=バロンいわく、人体に影響が出るには「そんな小切手を13万6000枚食べる必要がある」。引き出せる金額は1回10ポンドまでで、本人はそれをハメを外した週末には十分な額だと評している。

この話、知ってた?
押すと、みんなの初耳率が見られます