ことば第148号朝刊

英単語「OK」は、新聞のユーモアから生まれた

チナミニチンチラが読み上げます(4分23秒)

OKとは世界中で通じる、おそらく地球上でもっとも使われている英単語である。英語圏の日常会話でも、日本人同士のおしゃべりにおいてでも、この二文字は頻繁に活用される。それだけ普遍的な言葉なら、さぞ由緒正しい出自があるのだろう——ドイツ語の軍の階級の略、フランス人がハイチに築いた港町の名、電信用語など。実際、この単語の語源をめぐっては様々な説が乱立し、学者たちが真顔で争ってきた。

ところが、コロンビア大学の学者アレン・ウォーカー・リードが1960年代半ばに古い新聞を掘り返して突き止めた答えは、そのどれでもなかった。OKの初出は1839年3月23日、ボストン・モーニング・ポスト紙。しかもそれは、ライバル紙プロヴィデンス・ジャーナルの編集方針をからかう、ごく短い記事の末尾に置かれた一言だった。意味は「oll korrect」。all correct(全部正しい)を、わざと綴り間違えたユーモアである。

当時のニューイングランドでは、略語遊びが流行していた。若い知識人たちが単語をわざと誤記し、その頭文字を取って隠語にするという遊びだ。モーニング・ポスト紙の編集長チャールズ・ゴードン・グリーンはその流行の先頭を走っていて、「no go」を「know go」と綴って「KG」にする、といった略語を次々に紙面へ流し込んでいた。今日の私たちにはまるで笑えないが、1800年代にはこれが大ウケだったのだ。つまりOKは、現代でいえば「草」や「www」のようなネットスラングと同様、その場限りの内輪ネタとして生まれた。事実、グリーンが量産した略語のほとんどは定着せずに消えている。

OKも同じ運命をたどりかけた。それを救ったのは、翌1840年の大統領選である。再選を目指す現職マーティン・ヴァン・ビューレンは、ニューヨーク州キンダーフックの出身で、「オールド・キンダーフック」というあだ名を持っていた。支持者たちはその頭文字が流行りかけの略語と一致することに気づき、「Vote for OK」を合言葉に掲げ、全国に「OKクラブ」を作って票を集めにかかった。OKは「オールド・キンダーフックは全部正しい」という二重の意味を背負い、一気に全米へ広がっていったのである。

しかし、選挙そのものはヴァン・ビューレンの敗北に終わった。有権者は彼をOKとは見なさなかったのだ。あだ名も本人も歴史の隅に押しやられ、生き残ったのは選挙用の語呂合わせだけとなった。その二文字はやがて北米を越えて世界に広がり、ついには月面のバズ・オルドリンの口からも発せられた。ボストンの新聞社の片隅で編集長が飛ばしたユーモアは、こうして人類が他の天体に到達して最初に発した言葉になってしまった。

ちなみに、

OKと選挙にはもう一つ逸話がある。ヴァン・ビューレンの陣営がOKをスローガンに使い出すと、対立陣営はそれを逆手に取り、彼の後ろ盾だったアンドリュー・ジャクソンを攻撃する材料にもOKを使った。無教養なジャクソンは読み書きが苦手で、all correctを「ole kurrek」だと思い込み、書類の承認欄に「O.K.」とサインしていた——というでっち上げの噂を広げたのである。この作り話も強烈でユーモラスだったため、OKをが広まるきっかけの一つとなった。

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