スナフキンのモデルは、作者の恋人だった現役国会議員
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スナフキンとは、ムーミン谷に春になると現れ、秋には一人で旅に出ていく放浪者だ。帽子とパイプ、ハーモニカだけを持ち、誰にも縛られずに生きる——ムーミンの登場人物の中でも、とりわけ「かっこいい大人」として愛されてきたキャラクターである。
ところが、この浮世離れした自由人には、現実のモデルがいたとよく言われている。作者トーベ・ヤンソンが1940年代に交際していた恋人、アトス・ヴィルタネンである。なんと彼は、フィンランドの現職の国会議員だった。
ヴィルタネンは、ジャーナリストであり、作家であり、政治家でもあった。1936年から54年まで20年近く議席を持ち続け、新聞の編集長も務め、ニーチェやストリンドベリを論じた著作も残している。「奔放な生命力と、まばゆいほど明晰な頭脳の持ち主。」トーベは1944年秋の手紙で、恋人をそう書き表した。
そんな彼の姿かたちも、スナフキンとよく似ている。つばの折れたフェドーラ帽にパイプ、そしていつでも身軽に発てるようにという背中のリュック。余計な持ち物は不要だという人生観まで、あの放浪者そのままだったという。
二人が出会ったのは1943年の初めで、関係は1950年代の初頭まで続いた。この期間はムーミンの創作期と、そっくり重なっている。トーベが最初の5冊を書いて挿絵をつけたのはヴィルタネンと共に過ごした年月であり、スナフキンが物語に現れたのも、まさに二人が付き合っていた最中のことだった。
ヴィルタネンが残した影響は、キャラクターの造形だけにとどまらない。彼はスウェーデン語系新聞の編集者として、トーベに初めてのムーミンの新聞連載漫画を発注している。『ムーミントロールと世界の終わり』と題されたその作品が、のちのムーミンコミックの第一歩になったのだ。
ただし、この話には諸説ある。スナフキンのモデルとしては、トーベの父や弟、パイプをくゆらせる数学者だった伯父の名前も挙がってきた。トーベ自身がインタビューでほのめかした人物は時期によって変わっており、誰がモデルなのか事実として確認されたことは一度もない。
ムーミンそのものの原型も哲学者である。トーベは以前、哲学者イマヌエル・カントの戯画として、わざと醜い生き物を一匹描いたことがあった。それをやさしい姿に描き直したものが、あの白くて丸いムーミンになったのだ。