かつてドイツでは、賄賂が税控除の対象だった
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接待費、交通費、消耗品費。会社の経費として落とせるものには、当然ながら線引きがある。領収書の出ない後ろめたい出費は、まず通らない。
ところが、かつてのドイツには、その線の内側に賄賂が入っていた。1995年まで、企業が取引先に渡した賄賂は、事業上の必要があったと言えるかぎり損金として認められていた。違法でないばかりか、経費として計上して、その分だけ税金を軽くできたのだ。
この控除には、なかなか奇妙な条件が付いていた。誰に渡したのかを名前まで申告しなければ、控除は認められなかったのだ。つまり、税務署に賄賂の相手を密告しながら節税する、という構図になる。実際に使う企業はほとんどなかったと伝えられているが、制度として口が開いていたこと自体が大きい。「有用な経費」というごく普通の用語が、社内では賄賂を指す隠語として通用していた会社もある。14億ドル規模の贈賄が後に発覚したシーメンスでは、社員がプロジェクトの原価計算にこの言葉を使っていたという。
当時のビジネス誌は、この慣行が公共事業の契約額を2〜3割も押し上げていると指摘して、やめるよう勧告していた。国全体で賄賂の上乗せ分を税で補助していたようなものだった。
この慣行は、外圧によって終わりを迎える。1997年に成立したOECDの贈賄防止条約に法律を合わせる形で、ドイツは1999年に控除を全廃。賄賂そのものも、2002年にようやく罰せられるようになった。
賄賂が違法化される直前のシーメンスは、腐敗と戦う国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルのドイツ支部に、企業会員として迎えられていた。看板を掲げた側が、中では「有用な経費」を計上し続けていたというのは、何とも皮肉な話である。