文化第179号夕刊

本を書くたび刑期が縮んだかつてのルーマニアでは、囚人が続々と作家デビューした

チナミニチンチラが読み上げます(3分50秒)

刑務所で過ごす時間を少しでも短くしたい。そう考えた受刑者が取る手段といえば、模範的な態度で過ごすか、刑務作業に精を出すか——おおむね、そんなイメージではないだろうか。

ところがルーマニアには、まったく別の近道が用意されていた。服役中に本を1冊出版するごとに、刑期が30日短縮されるという法律である。1969年の社会主義体制下に作られたもので、肉体労働に向かない知識人の受刑者を想定した規定だった。

この条文が、数十年を経て思わぬ使われ方をする。目をつけたのは、汚職で服役していた政治家や実業家たちだった。彼らは獄中から次々と「著作」を発表し始める。汚職で服役した元首相アドリアン・ナスタセは、回想録に始まり、自身の外交上の役割を語った一冊、さらには800ページを超える過去の演説集までを獄中から世に送り出し、2014年に出所した。実業家のゲオルゲ・コポシュは歴史や観光をテーマにした5冊で約200日分を削り、4年の刑のうち400日ほどで釈放されている。

ブームの規模は数字にはっきり表れている。この法律は1969年からあったにもかかわらず、2010年までに出版された「学術的著作」はわずか4本。それが2013年に11本、2014年に60本、2015年には331本へと跳ね上がった。刑務所当局の集計では、2013年から2015年のあいだに188人の受刑者が400冊以上を出版している。

当然、疑いの目が向けられた。年に何冊も書き上げる獄中作家たちに対し、汚職対策の当局が捜査に乗り出す。焦点は、金のある受刑者がゴーストライターや、著作を審査する立場の大学教授に報酬を払って書かせていたのではないか、という点だった。ブカレスト大学は、コポシュの本が若手歴史家の修士論文の盗用だと認定。実業家ジジ・ベカリに至っては、自分は要点を口述しただけで、実際に書いたのはゴーストライターだったと後に認めている。

2016年1月、法務大臣ラルカ・プルナがこの条項の廃止を表明した。理由として挙げたのは、知的労働を肉体労働より優遇する差別的な規定であり、EUの他のどの国にもそんな制度はない、ということだった。獄中の出版ブームは、こうして店じまいを迫られることになった。

ちなみに、

大量生産された獄中本がどれだけ読まれたのかは、書店のデータが物語っている。ルーマニア最大手のオンライン書店で調べたところ、これらの本はほとんど買える状態になかった。出所のみを目的として書かれた本は、案の定、売れ行きが悪いようだ。

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