転がって逃げるヘビがいる——速さは這うときの4倍
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ヘビの移動といえば、体を左右にうねらせて地面を這う姿を思い浮かべるのではないだろうか。実際、大半のヘビはこの横うねり運動で前に進む。
ところが、東南アジアにすむドワーフ・リードスネークという小さなヘビは、天敵に出くわすと這うのをやめ、そのまま地面を転がって逃げる。多角度のビデオで計測したところ、転がっているときの最高速度は秒速1.72〜3.69メートル。時速にすれば6〜13キロほどで、這って進むときの最高速度の約4倍だった。
転がりは、本来なら動物にとって割に合わない移動手段だ。車輪が回り続けられるのは車軸があるからで、回る部分と支えられる部分がきちんと切り離されている。動物の体に、そんな仕組みはない。体ごと回れば頭も目も一緒に回ってしまい、姿勢を保つのも進む方向を決めるのも難しくなる。速くなるほど収拾がつかなくなるので、自ら転がって逃げる動物はごくわずかしか知られていない。
それなのに、このヘビは幅20センチしかないコースを車輪のように転がったまま走り抜けた。でたらめに転んでいるのではなく、転がりながら進む方向を制御しているのだ。
どうやっているのか。録画をコマ送りで見ると、ヘビは体全体をタイヤのように一体で回転させているわけではなかった。動きは、人間の側転に近い。まず、ヘビは体の片側(たとえば左の脇腹)を地面につけ、横倒しの姿勢で前方へ転がる。このとき後ろ半身は弓なりに反り、地面から浮いている。次に、その浮いた弓なりの部分を、頭の脇を通して反対側(右側)へ大きく振り下ろす。研究者はこの一振りを「ストローク」と呼んでいる。
振り下ろされた体が着地すると、今度は右の脇腹が地面につき、体は半回転ひねった状態になる。つまり、背中が見えていた姿勢からお腹が見える姿勢へと裏返る。そこから再び転がり、今度は左へストローク。接地する脇腹とストロークの向きが一周ごとに左右入れ替わり、この交互の動きを刻み続けることで転がりが途切れずに続く。
そして最も驚かされるのが頭だ。後ろ半分が激しく回転しているあいだも、頭は一緒に回らず進行方向を向いたままで、地面からの高さもほとんど変わらない。しかも速く転がるときほど頭を高い位置に保ち、上下のぶれを小さくする。車軸のような仕切りを一切持たないまま、体を「推進のために大きく回る部分」と「安定を保つ頭」に機能で分けているわけだ。
体のかたちを眺めただけでは、こんな移動は予測できない。行動の工夫だけで、形の制約を飛び越えてしまった。
この転がり逃走そのものは新発見ではない。以前から図鑑に書かれており、野外での観察記録も残っていた。それでも、どう体を動かしてあれを成立させているのかは長らく分からないままで、2026年にようやく中身が明かされた。