科学第235号夕刊
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白髪が黒髪に戻る引き金は、休暇だった

チナミニチンチラが読み上げます(3分55秒)

チンチラ丸さんから、「白髪は頑張れば黒髪に戻るらしい」という話が届いた。

白髪は、老化のいちばんわかりやすい目印だ。黒や茶色だった髪がある時期から色を失い、一度白くなればもう元には戻らない。そう思っている人が多いのではないだろうか。

ところが2021年、コロンビア大学の研究チームが発表した論文は、そのイメージを覆した。チームが探し集めたのは、根元と毛先で色の違う「二色の毛」である。毛は根元から伸びるので、根元がいちばん新しい。根元が白く毛先に色のある毛には色が抜けた時期の記録が、根元に色があり毛先が白い毛には色が戻った時期の記録が残っている。

14人の協力者から集めた毛を高解像度のスキャナーで読み取り、根元から毛先まで20分の1ミリ刻みで色の濃さを数値にした。この一刻みが、だいたい1時間分の伸びにあたる。木の年輪と同じように、毛にはそれが伸びていた時期の体の状態が刻まれているのだ。

その結果、14人のうち9歳から39歳の10人で、いったん白くなった毛が再び色を取り戻していた。しかも頭髪だけでなく、体のほかの部位の毛でも同じことが起きていた。

何が色を戻したのか。チームは協力者に、週ごとのストレスの強さを振り返って記録する日記をつけてもらい、毛の色の変化と時期を突き合わせた。すると、色が抜けた時期はストレスの強い時期と、色が戻った時期は緊張から解放された時期と重なっていた。失恋から立ち直ったあとに色が戻った毛もあった。2週間の休暇に出かけた1人では、頭の毛5本がそろって黒に戻っていた。

調べてみると、大筋はそのとおり。ただし、色を戻すスイッチは頑張ることではなく、むしろ力を抜くことだった。そして戻るのは、白くなってから日の浅い毛に限られる。

研究チームの見立てでは、毛には白くなる「境目」がある。年齢による下地にストレスが上乗せされて境目を越えると白くなり、ストレスが減って境目を下回れば色が戻る。中年期の毛は加齢で境目の近くまで来ているので、ストレスのひと押しで越え、力を抜けば戻る余地がある。一方、頭が白髪で埋まっている人の毛は、下地だけで境目をはるかに超えていて、もう下回れない。これが「戻れない地点」だ。

チンチラ丸さん、ありがとう。

ちなみに、

マリー・アントワネットは処刑を前に一晩で白髪になったと語り継がれているが、この伝説は成り立たない。皮膚の外に出ている毛はすでに完成した組織で、あとから色は変わらない。色が決まるのは、皮膚の下の毛根で毛が作られているときだけなのである。

調べた結果だいたいほんとうチンチラ丸さんの話の大筋はそのとおり。細かいところだけ、調べて分かったことを本文に書きました。
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