ネアンデルタール人もキスをしていたかもしれない
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キスと聞いて、どんな場面を思い浮かべるだろうか。映画のラストシーン、恋人たちの別れ際。いずれにせよ、人間が文化のなかで育ててきたロマンチックな作法というイメージが強い。
ところが、オックスフォード大学の研究チームが出した答えは、そのイメージと大きくかけ離れている。キスが最初に進化したのは、約2150万〜1690万年前。人類が登場するよりはるか前の、大型類人猿すべての共通祖先の時代だ。
研究方法も面白い。キスはもちろん化石に残らない。そこで研究チームは、いま生きている霊長類の行動から祖先を逆算する手を使った。まず物差しをそろえるため、キスを「食べ物のやりとりを伴わない、攻撃的でない口と口の接触」と定義する。この基準ならチンパンジーでもオランウータンでも同じように数えられる。次に、アフリカからアジアにかけて進化したサルや類人猿を対象に、種ごとにキスが観察されているかどうかを文献から拾う。そして集めた記録を、霊長類の家系図に書き込んでいく。あとは枝をさかのぼり、それぞれの祖先がキスをしていた確率を統計的に計算する。シミュレーションは1000万回繰り返された。会ったことのない先祖の暮らしぶりを、子孫の顔ぶれから推理するようなやり方だ。
この手法をヒトの系譜に当てはめたとき、思いがけない数字が出た。絶滅したネアンデルタール人がキスをしていた確率は、約84%だ。
この84%はあくまで逆算による確率だが、論文はまったく別の角度からの傍証も挙げている。口の中にすむ微生物だ。ヒトとネアンデルタール人が別々の種に分かれたのは、およそ45万〜75万年前。ところが、両者が共通して持つある口内微生物の系統をたどると、枝分かれしたのはおよそ11万〜14万年前でしかない。種として袂を分かったあとも長いあいだ、口の中の住人は二つの系統を行き来していたのだ。
微生物が移るには、唾液が触れ合う必要がある。研究チームが挙げた経路は、食べ物の分け合い、大人が噛み砕いた食事を子に与える習慣、そしてキスだ。ヒトとネアンデルタール人は交雑し、その痕跡は現代人の遺伝子に残っている。それも合わせれば、二つの種が口づけを交わしていたと考えるのは自然だ。
それでも、最大の謎は残っている。なぜキスをするのか。病気がうつる危険を負う一方で、繁殖や生存に明らかな得があるわけではない。チンパンジーはケンカのあとの仲直りに短く口を合わせ、ボノボは舌を使った長いキスをする。行動の意味は種によってばらばらで、研究チーム自身も、次に解くべき問いはその理由だとしている。私たちが恋人とキスをするのは、愛を伝える方法を発明したからではなく、類人猿の祖先から受け継いだ癖を手放せずにいるだけなのかもしれない。
そのキスは、人類のあいだですら当たり前の習慣ではない。キスが記録されている人間の文化は、全体の46%にとどまる。キスは太古から受け継がれてきたと思われる一方で、半分以上の文化には根づいていないのだ。
出典
独立した出典 4件- ネアンデルタール人も84%の確率でキスをしていたnazology.kusuguru.co.jp
- 一次Ape ancestors and Neanderthals likely kissed, new analysis finds (EurekAlert press release)eurekalert.org
- 一般Ancient DNA Suggests Neanderthals Engaged In Kissing -- And Probably Smooched Humans Too!studyfinds.com
- 一般First Kiss Dates Back 21 Million Years, Study Finds Neanderthals Also Kissedts2.tech