生き物第157号夕刊

雷を引き寄せ、利用する木がある

チナミニチンチラが読み上げます(3分26秒)

雷が落ちた木、と聞いて思い浮かぶのは、幹が黒く裂けて立ち枯れた姿ではないだろうか。実際、雷は世界で年に数億本もの木を枯らしている、森にとって最大級の災害である。

ところが、中米パナマの熱帯雨林に立つアーモンドロという巨木は、そのイメージから大きく外れている。米カリー生態系研究所のエヴァン・ゴーラ率いるチームが、パナマの森で落雷を受けた93本の木を2〜6年にわたって追跡する実験を行った。93本のうち9本がアーモンドロだったが、なんとその9本すべてが直撃を生き延び、しかも損傷は軽微だった。他の樹種では64%が2年以内に枯死していたのだから、その差は異様である。

さらに調べると、この木にとって雷は災難どころか、都合のいい出来事だった。電流はアーモンドロの枝葉を伝い、絡み合ったつるや触れ合った枝を経由して、あるいは木と木のわずかな隙間を飛び越えて、周囲の木へと流れ込む。1本のアーモンドロが打たれるたび、平均で9.2本の隣人が巻き添えで枯れていた。自分は無傷のまま、水や養分を奪い合っていた競争相手だけが消えてくれるのだ。ゴーラの言葉を借りれば「近づいた木は、感電死する」。

道連れになるのはライバルだけではない。アーモンドロの樹冠にはリアナと呼ばれる寄生性のつる植物が覆いかぶさり、葉に届くはずの光を横取りしている。ところが落雷後、このつるの数は78%も減っていた。電流は、木にまとわりつく厄介者だけを選り分けるように焼き払ってしまう。

では、なぜこの木だけがそんな芸当をやってのけるのか。研究チームは、アーモンドロが雷を「避ける」のではなく「引き寄せる」方向に進化した可能性を指摘している。高さは50メートル近くに達し、樹冠は横に大きく広がる。この形のせいで、同じような大きさの他の木に比べて最大68%も雷に打たれやすい。つまり自ら避雷針になっているのだ。雷への耐性は、材の水分や電気の通しやすさに関係しているとみられている。そして落雷という恩恵がなければ、これほど長くは生きられないだろうと研究者は言う。厄災を浴びることが、この木の生存戦略そのものになっている。

ちなみに、

アーモンドロは森の動物たちにとっても欠かせない存在で、乾季にはその実が100種を超える動物を養っている。雷に打たれて平然としている巨木が、森の食卓を支えているのだ。

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