2年かけて飛行機を食べた男
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「なんでも食べる」と言う人がいたら、たいていは好き嫌いがないという意味だ。虫でも臓物でも平気、という猛者でも、せいぜい食べ物の範囲に収まっている。
ところが、フランスにその看板を文字どおりに背負った芸人がいた。ミシェル・ロティト、芸名は「ムッシュー・マンジュトゥー」——なんでも食べる男。彼が食べたのは金属、ガラス、ゴムである。中でも語り継がれているのが、1978年から1980年にかけて、2年をかけて平らげたセスナ150型の軽飛行機だ。プロペラも翼も座席も、機体まるごと一機分。ギネス世界記録は彼に「世界で最も奇妙な食生活」の記録を認定した。
食べ方はいたってシンプルだった。電動ノコギリで機体を一口大のかたまりに切り分け、それを噛まずに、錠剤のように飲み込む。喉を傷つけないよう鉱物油を先に流し込み、食事中は水を大量に飲んで潤滑剤代わりにした。1日の摂取量はおよそ900グラム。本人いわく、医者に相談するとアーティチョークだのパラフィン油だのを勧められたが、結局は水を数リットル飲むのが一番だとわかったという。
では、なぜ彼は死ななかったのか。医師の診察によれば、ロティトの胃と腸の内壁は常人の倍ほどの厚さがあり、鋭い金属を飲み込んでも傷つかなかった。加えて胃液が異常に強く、内視鏡検査では金属を泡立てながら侵食していく様子が観察されている。そしてこの「なんでも食べたくなる」欲求自体は、食べ物でないものを口にしたくなるピカという精神疾患によるものだった。生涯で飲み込んだ金属は、推定で9トンを超える。
メニューは飛行機だけではない。自転車18台、ショッピングカート15台、テレビ7台など、家一軒分の金属が彼の胃を通過している。棺桶も食べた。取っ手まで含めて、である。一方で、バナナのような柔らかい食べ物は胸やけを起こして苦手だったというのだから、体のほうもよほど混乱していたのだろう。
ギネス世界記録は彼の偉業を称えて真鍮製の記念プレートを贈っている。ロティトはそれも食べた。