科学第185号朝刊

結石の排出にはジェットコースター、特にビッグサンダー・マウンテンが効く

チナミニチンチラが読み上げます(3分57秒)

腎臓結石の治療といえば、衝撃波で石を砕く手術か、ひたすら水を飲んで石が出るのを待つか。どちらにしても病院と痛みがつきまとうもの、というイメージではないだろうか。

ところが、この病気にはジェットコースターという選択肢があるかもしれない。しかも遊園地のどこに座るかで、効き方がまるで変わる。

きっかけは、ミシガン州立大学の泌尿器科医デヴィッド・ワーティンガーのもとに届いた患者たちの報告だった。ウォルト・ディズニー・ワールドのビッグサンダー・マウンテンに乗ったら結石が出た、という話が複数の患者から寄せられたのだ。中には何度も乗って3個の石を出したと語る患者までいた。

そこでワーティンガーがやったことが、常軌を逸している。中空の腎臓を再現したシリコン製の立体模型を用意し、そこに尿と4ミリ以下の結石を詰め、リュックに入れてビッグサンダー・マウンテンに乗り込んだのだ。しかも1回ではない。予備研究だけで20回乗り、さらに模型を身体に装着しての拡大研究まで行っている。使った結石は全部で174個にのぼる。

結果は患者たちの証言を裏づけた。そして思いがけない発見もあった。座席位置で成績がまるで違ったのだ。先頭付近の車両に座ったときの排出率はわずか16パーセント。ところが最後尾の車両に移ると、約70パーセントまで跳ね上がった。石が腎臓の上部にあった場合は、なんと100パーセントが排出された。

では、なぜビッグサンダー・マウンテンなのか。ワーティンガーは他のコースターも試している。スペース・マウンテンやエアロスミスのロックンローラーコースターでは、まったく効果がなかった。速すぎて激しすぎるコースターは、強いGで石を腎臓に押しつけてしまうのだという。理想は、適度に荒っぽくて素早く、ひねりやカーブはあるが上下逆さまにはならないコースター。絶叫マシンとしては物足りない、昔ながらの乗り物こそが効くのである。

ワーティンガーはこれを本気の治療提案として語っている。結石で救急外来に駆け込む人はアメリカで年間30万人と推計され、治療費は5000〜1万ドルに達しうる。衝撃波で石を砕く治療では小さな破片が腎臓に残り、それが次の石の種になってしまう。だからこそ、破片がまだ小さいうちにコースターに乗ってみるべきだ——年に1回のメンテナンスとして乗るのも手だ、とまで述べている。もちろん、乗る前に注意書きには従うこと、という条件つきで。

ちなみに、

この研究は2018年のイグノーベル賞医学賞を受賞した。「人々を笑わせ、そして考えさせた」研究に贈られる賞で、同じ年には上司に見立てたブードゥー人形で報復すると職場の不公平感が晴れるかを検証した研究なども並んでいる。尿入りの腎臓模型を背負って何度も絶叫マシンに乗った医師が、笑いと実用性を両立させてしまったのだ。

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