生き物第174号朝刊

焼夷弾に放尿し、家族を助けた犬

チナミニチンチラが読み上げます(3分12秒)

戦争で活躍した動物といえば、伝書鳩、軍馬、軍用犬。——おおむね、厳しい訓練の末に任務を果たした動物たち、というイメージではないだろうか。イギリスには、そうした動物の勇敢さをたたえる勲章がいくつもあり、動物福祉団体ブルー・クロスが贈る「ブルー・クロス・メダル」は、その古参格である。

ところが、この勲章を受けた動物のなかに、訓練や任務とはおよそ無縁の方法で家一軒と人命を救った一頭がいる。グレートデーンの「ジュリアーナ」だ。彼女がやったのは、落ちてきた焼夷弾の上にまたがって放尿することだった。

1941年4月、ドイツ軍による空襲「ブリッツ」が、イギリス各地に焼夷弾を降らせていた。そのうちの一発が、ジュリアーナと飼い主の住む家の屋根を突き破って落ちてきたとされる。焼夷弾は、着弾してから激しく燃え上がり、建物そのものを火元に変えるための兵器である。普通なら、その家は燃える。

では、ジュリアーナはどうしたのか。音にも煙にもひるまず、燃える焼夷弾に歩み寄り、その上に立って用を足したと伝えられている。火は消え、延焼は食い止められた。狙ってそうしたのか、ただ驚いて漏らしただけなのかは、今も分かっていない。確かなのは、家が焼けずに済み、家族の命まで助かったことだ。この働きで、ジュリアーナは最初のブルー・クロス・メダルを授与されている。

しかも彼女の受章は、これ一度きりではない。1944年11月、飼い主一家が営む靴店で火の手が上がったとき、ジュリアーナは家族に危険を知らせ、再び命を救った。こうして二つ目のメダルを受けている。ブルー・クロス・メダルを二度受けた動物は、歴史上このグレートデーンだけである。

ちなみに、

この約70年後にジュリアーナの名が再び注目を浴びた。2013年、イギリス南西部ブリストルでおこなわれた家財整理中、運び出された品のなかに、ジュリアーナの肖像画と、いきさつを記した銘板、そして二つ目のメダルが紛れていたのだ。この一式が競売にかけられたときの見積もりは60ポンドほどだったが、落札額は1,100ポンドまで跳ね上がっている。出品を扱った競売人は、ジュリアーナを「大きな膀胱を持つグレートデーン」と紹介していたという。

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