ことば第205号夕刊

「ゴールデンウィーク」は、映画会社が集客のために作ったキャッチコピーだった

チナミニチンチラが読み上げます(3分31秒)

毎年4月末から5月初めにかけて訪れる、日本最大級の大型連休。それが「ゴールデンウィーク」だ。祝日法で祝日が集中した結果できた休みなので、名前のほうも国が決めたか、自然に広まった呼び名だろう——というイメージではないだろうか。

ところが、この言葉を作ったのは国でもマスコミでもない。映画会社である。1951年、大映の専務取締役だった松山英夫が、自社の映画を売るためにひねり出した宣伝用語なのだ。

きっかけは、同じ年に公開された『自由学校』という一本の映画だった。この作品が変わっているのは、松竹と大映という二大映画会社が同じ題名の映画を別々に製作し、あろうことか5月初旬の連休に同時公開したという点である。正面衝突だ。ところが共倒れになるどころか、どちらも大ヒットを記録してしまった。

これは当時の映画界にとって、ただのヒットでは済まない事件だった。それまで業界には「大当たりが出るのは正月とお盆だけ」という通説があったからだ。5月の連休という、誰も本気で狙っていなかった時期に、客がどっと入る。大映にとっての『自由学校』は創設以来最高の売上を記録する作品となり、業界は一気に活気づいた。

そこで松山は、この稼ぎどきに「興行成績がよい、輝かしい期間」という意味を込めて名前を付けた。それが「ゴールデンウィーク」である。以後、大映はこの時期に照準を合わせて人気スターを起用した作品を次々と投入し、華やかなキャッチフレーズを刷り込んだ宣伝ポスターを量産していく。狙いは的中し、やがて他のレジャー産業も便乗。1950年代半ばには、映画の宣伝文句という出自を忘れたまま、言葉だけが社会にすっかり定着した。和製英語なので、もちろん英語圏から来たわけでもない。

この出自を、いまだに律儀に気にしている組織がある。NHKや一部の民放が「大型連休」と言い換えているのは、カタカナ語を避けたいといった事情のほか、もともと私企業の宣伝用語だったという理由も挙げられているのだ。

ちなみに、

味をしめた松山は続編も狙っている。文化の日を中心にした秋の一週間を「シルバーウィーク」と名付け、二匹目のドジョウを狙ったのだ。しかしこちらは当時まったく定着せず、自然消滅。現在9月の連休が「シルバーウィーク」と呼ばれているのは、名付け親の意図とは関係なく、後から別の時期に付き直された名前である。

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