文化第215号朝刊

『トヨタ当選』のはずが……訴訟に発展した売上コンテスト

チナミニチンチラが読み上げます(3分8秒)

アメリカのレストランチェーン「フーターズ」のフロリダ州パナマシティビーチ店で、2001年4月、ビールの売上コンテストが始まった。参加店舗ごとに、その月いちばん多くビールを売った店員が抽選に進める。当たりを引けば、景品は新車のトヨタだ。店長のジャレッド・ブレアがそう告げれば、店が盛り上がらないわけがない。

コンテストが進む間、ブレアは細かい条件まで口にしていた。車種は乗用車かトラックかバンかまだ分からない、登録の費用は当選者の自己負担になる——そんな事務的な話まで出てくれば、誰でも本気の企画だと受け取る。

5月初め、優勝者として名前を呼ばれたのは、当時27歳の店員ジョディ・ベリーだった。彼女は目隠しをされ、店の駐車場へと案内される。新車が待っているはずの場所である。

ところが目隠しを外すと、そこにトヨタ車はなかった。置かれていたのは、映画『スター・ウォーズ』に登場する緑色の小さなキャラクター、ヨーダの人形である。トヨタ(Toyota)ではなく、おもちゃのヨーダ(toy Yoda)。発音のよく似た語呂合わせが、この企画のオチだった。ブレアは笑った。ベリーは笑わなかった。

ベリーは店を辞め、店の運営会社を相手に訴訟を起こす。訴えの中身は、契約違反と詐欺的虚偽表示。これに対する店側の答えは、あのコンテストは最初からエイプリルフールのジョークだったというものだった。たしかに、コンテストの告知があったのは4月1日である。

裁判は2002年5月、和解で決着した。詳細な条件は公表されていないが、ベリーの弁護人によれば、彼女は欲しいトヨタ車を何でも買えるだけの金額を受け取ったという。ジョークで済ませるつもりだった一言が、本物の新車一台と同じ重さになったのだ。

ちなみに、

この一件は法律の世界にも残っている。「You Asked for It, You Got It … Toy Yoda(欲しがったものは手に入った……トイ・ヨーダ)」という、ダジャレをそのまま題に冠した論文が2003年に法律誌へ発表され、冗談めかした申し出がどこから契約として成立してしまうのかを論じている。店長の軽口は、契約法の検討材料になってしまったのだ。

この話、知ってた?
押すと、みんなの初耳率が見られます