文化第227号夕刊

「X-MENは人間ではない」——そう法廷で主張したのは、X-MENのフィギュアを売る会社だった

チナミニチンチラが読み上げます(3分38秒)

「X-MEN」は、生まれつき特殊な力を持つミュータントたちを描いたマーベル・コミックの人気シリーズだ。物語の芯にあるのは派手な超能力バトルではなく、自分たちも人間として扱われたいと世間に訴える彼らの闘いであり、差別や不寛容に抗う物語として読まれてきた。

ところが2003年、そのX-MENは人間ではないとアメリカの法廷で主張した会社がある。しかもそれは、X-MENのフィギュアを作って売っている当のメーカー、トイビズ社だった。

理由は関税である。当時のアメリカの関税分類では、アクションフィギュアは二つの箱に振り分けられていた。人間をかたどった「人形」は12%、動物やロボット、怪物などの人間以外の生き物を表した「その他の玩具」は6.8%。同じ大きさの同じプラスチックの塊でも、中身が人間かどうかで税率がほぼ倍ちがう。そこでトイビズは、自社が輸入するX-MENやファンタスティック・フォーのフィギュアは人間ではない生き物だと訴えた。

アメリカ税関は、多少人間離れした特徴があるだけで人間でなくなるわけではないと反論した。しかし米国国際貿易裁判所のジュディス・バージレイ判事は、60体を超えるフィギュアを一体ずつ検分したうえで、2003年1月3日、トイビズの言い分を認めた。判決が根拠のひとつに挙げたのは、メーカー自身のパッケージだった。彼らをミュータントと呼び、特別な力を持って生まれた者として売っていること自体が、人間とは別の——あるいは人間を超えた——存在を表している裏づけだという。トイビズは税率を半分近くに落とし、過去に払いすぎた輸入税の還付まで手にした。

困ったのはファンである。何十年も人間性を認めてほしいと訴えてきた主人公たちが、よりによって商品の節税のために非人間だと認定されてしまった。マーベルはすぐ火消しに回り、「我々のヒーローは、生きて呼吸する人間だ」と前置きしたうえで、ただ並外れた能力を持っているだけだと説明した。フィギュアに人間以外の特徴が認められたのは、それだけ彼らの力が現実を超えている証明でもある、という言い分だ。この裁判は、アメリカ史でもっとも奇妙な訴訟のひとつとしてたびたび引き合いに出されている。

なお、争いの火種になった「人形」と「その他の玩具」の線引きは、2007年の関税分類の改正で消えた。どちらも、いまは同じ区分である。

ちなみに、

関税のために何かの正体が法廷で決められた例はほかにもある。1893年の裁判では、トマトは関税上、果物ではなく野菜だと判断されている。

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