生き物第242号夕刊

カエルに丸呑みされても、お尻から生きて出てくる虫がいる

チナミニチンチラが読み上げます(2分53秒)

池や水田にすむ小さな水生甲虫、マメガムシ。泳ぎは得意だが、カエルの前ではただの獲物だ。舌をひと伸ばしすれば捕まる、手軽なエサ。丸呑みされた虫の運命は決まっている——そう思うのが普通だろう。

ところが、このマメガムシは呑まれても終わらない。神戸大学の研究で、トノサマガエルに食べられたマメガムシが消化されずに体内を通り抜けることが確認された。そのまま、カエルの肛門から生きて出てくる。9割以上が、食べられたあとで平然と生還していたのだ。

虫がたどる道筋は、そのまま消化の順路である。のどを抜け、胃を泳ぎ、腸を滑り降り、最後は出口から這い出してくる。消化液に溶かされる前に、自分の脚で先へ進んでしまうのだ。排出された個体はどれも生きていて、元気に動いていた。

実験では、呑み込まれたマメガムシの93.3%が6時間以内に排出された。しかも最速の個体は、口に入ってからたった6分で出口に着いている。カエルが食事を終えて一息つく間もない速さだ。

捕食者に食べられて生き延びる動物は、ほかにもいる。巻貝は殻の口を閉じてやり過ごし、魚や鳥の体内を無事に通過することが知られている。しかしそれは、硬い殻にこもって運ばれるのを待つ受け身の生還だ。消化を生き延びる動物たちの生存率は、2割に届かないことが多い。マメガムシの9割超は、その水準をはるかに上回る。獲物が自力で捕食者の後ろ側から脱出したと記録したのは、2020年に発表されたこの研究が初めてだという。

ちなみに、

研究を率いた神戸大学の杉浦真治氏は、虫を捕食者に食べさせて何が起きるかを確かめる研究を他にも行っている。2018年には、化学物質を噴射するゴミムシの仲間が、ヒキガエルに自分を吐き出させることを突き止めた。虫がカエルから脱出する道は、前からも後ろからも、同じ研究者の手で押さえられているのだ。

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