スピード違反の罰金を賞金にしたくじを作ったら、3日で平均速度が22%落ちた
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速度違反自動取締装置、通称オービス。つまり道路脇に立っているあのカメラだ。あれに撮られて嬉しい人はいない。光った瞬間に決まるのは罰金の額で、制限速度を守って通った車のほうは、何も起きないまま通り過ぎるだけである。
ところが2010年11月、スウェーデンのストックホルムで、制限速度を守った車のほうを撮るカメラが動き出した。「スピードカメラ・ロッタリー」、つまり速度取締カメラの"くじ"版だ。制限速度内で通過したところを撮られた車は、自動でくじの抽選にエントリーされる。当たれば現金が手に入る。
そして賞金の出どころが面白い。なんと、速度を出しすぎて捕まったドライバーが払う罰金が、そのまま賞金の原資になるのだ。同じ一台のカメラが、飛ばした人から集めた金を、守った人に配る装置として働く。取り締まりの道具が、ご褒美の配布係を兼ねてしまった。
効果は3日で出た。実験期間中、このカメラの前を通る車の平均速度は、時速32kmから25kmへ落ちている。22%の減少だ。罰金を引き上げたわけでも、カメラを増やしたわけでもない。守った側に当たりくじを配る、という一点を足しただけで、ドライバーはアクセルを緩めたのである。
スウェーデンがこの独特なアイデアに乗ったのには理由がある。この国は1997年、交通事故による死者と重傷者をゼロにするという目標を議会で採択している。「ビジョン・ゼロ」と呼ばれる方針で、車の速度をどう落とすかは国の課題そのものだった。一方、アメリカ等など一部の国々では、プライバシーと罰金への反発が速度取締カメラの普及を長く妨げてきた。同じカメラでも、何に使うかで嫌われ方が変わるのだ。
この仕組みを考えたのは役所の人間でもメーカーの技術者でもない。もともとは、ケビン・リチャードソンという個人がフォルクスワーゲンのキャンペーン「ファン・セオリー」に応募したアイデアだった。楽しさこそ人の行動を良い方向に変える一番簡単な方法だ、という発想で公募されたものだ。彼は優勝賞金として2,500ユーロ受け取ったという。