配信: 2026-08-13 18:01(JST)
夕刊
文化第83号

ライバルの曲を1位に――ジャスティン・ビーバーが出した異例のお願い

チナミニチンチラが読み上げます(3分48秒)

イギリスには、毎年クリスマス週にどの曲がUKシングルチャートで首位を取るかを巡る、独特の熱狂した伝統がある。「クリスマス1位」の座は単なるヒットチャートの通過点ではなく、その年を象徴する称号として長年アーティストたちが本気でしのぎを削ってきた一大イベントだ。ファンも動員合戦さながらに曲をこぞって再生・購入し、SNSでは「自分の推しを1位に」という呼びかけが飛び交うのが恒例になっている。だから2015年のクリスマス直前、当のトップ候補と目されていたジャスティン・ビーバーが取った行動は、誰もが耳を疑うものだった。彼はライバルであるはずの慈善シングルを自分の新曲より応援してほしいと、ファンに真正面から呼びかけたのである。

その慈善シングルとは、英国民保健サービス(NHS)の職員らでつくる合唱団「NHSクワイア」が発表した「A Bridge over You」。日々患者と向き合う医師や看護師たちが、仕事の合間を縫って結成した合唱団による、チャリティーのための一曲だった。当時、クリスマス1位の最有力候補と目されていたのは他ならぬビーバー自身の新曲。普通のスターなら黙って自分の曲を推すか、せいぜい沈黙を守るところを、彼はあえて自分から不利になる行動を選んだ。彼は自身のツイッターで、ファンに向けてNHSクワイアの曲を後押しするよう促した。世界的なスター自らがライバル曲の応援演説をするという、チャート争いの常識をひっくり返す行動だった。

この呼びかけは単なる社交辞令や話題作りでは終わらなかった。結果として「A Bridge over You」は2015年のクリスマス、見事にUKシングルチャートの首位を獲得した。当時最大級のポップスターの一人だったビーバーを押しのけての1位という展開は、海外メディアでも「NHSクワイアがビーバーを破ってクリスマス1位に」と大きく報じられた。数字だけを見れば「無名の合唱団が世界的スターに勝った」という下克上のニュースだが、その裏には、本来なら勝者になるはずだった本人がわざわざ土俵を自分から譲ったという、もう一段仕掛けのある物語が隠れている。しかもその決断は所属レーベルの発表ではなく、本人名義のツイート一つで公にされた点も興味深い。ファンの声援を単なる人気投票の道具にせず、日夜働く医療従事者への敬意を示す機会に変えてみせた、クリスマスらしい一幕だった。

ちなみに、

当時ビーバーが投稿した文面は一言一句このような内容だったとされる。「1週間くらい1位じゃなくてもいいじゃないか。正しいことをして、彼らを勝たせよう。クリスマスなんだから」。計算されたPR戦略だと見る向きもあるが、少なくとも表向きは損得抜きの一言として世界中に拡散され、結果的に医療従事者を讃える曲を全英一のヒットへと押し上げる後押しとなった。

この話、知ってた?
チナミニ毎朝 7:00
ちなみに、ハチミツは腐りません。数千年前のハチミツも、まだ食べられ……
毎朝7時と毎晩18時、
今日のちなみには、アプリで。
通知を受け取れば、開かなくても
ひとつ賢くなれます。
App Store でダウンロード