文化第189号朝刊

山手線を真っ黒にしたNetflix、条例をすり抜けた驚きの広告手法

チナミニチンチラが読み上げます(3分23秒)

東京都の屋外広告物条例には、電車の車体広告の大きさについて細かい決まりがある。車体の一つの外面に表示できる広告の面積の合計は、その面の10分の1以下。だから山手線のラッピング電車は、窓の下あたりにキャラクターが小さく並ぶ程度の、いかにも控えめなものになる。宇宙兄弟やけいおん!のラッピング車両が「ずいぶんささやかだな」と話題になったのも、この10分の1ルールのせいだ。

ところが2022年10月、全身を真っ黒に塗られた山手線が走り出した。Netflixが1編成をジャックしたコラボ車両で、黒い車体のあちこちにNetflixのロゴがあしらわれている。遠目に見れば、あの赤と黒のデザインそのもの。10分の1どころの話ではない。当然SNSでは「これ条例違反では?」という声が上がったが、違反はしていなかった。申請された広告は、「N」のロゴと「NETFLIX」の文字だけだったのだ。

なぜそれで通るのかというと、企画の建前上、あの黒塗装はNetflixの広告ではないからだ。鉄道開業150年を記念して、JR東日本が開業時の1号機関車をイメージして車体を黒くした——つまり、ただの車体の色という扱いなのである。黒が車体そのものの色でしかないなら、広告として面積を数えるべきはロゴと文字だけ。それなら余裕で10分の1に収まる。この仕組みを紹介した弁護士も、「それ以外は、ただ山手線が黒いだけ」と解釈することで基準内に収めたのだと説明している。山手線は原則としてフルラッピングができない車両だが、解釈と交渉でここまでできてしまうのだ。

車内も手が入っていて、『イカゲーム』など人気作14本の世界観を再現した空間になっていた。運行は10月1日から12月31日までの期間限定。黒く塗装された山手線は、150年前の鉄道開業以来これが初めてだった。記念事業と広告がぴったり重なった、絶妙な一編成である。

ちなみに、

この手法自体は初めてではない。山手線の命名100周年のときには、復刻カラーのチョコレート色にラッピングされた車両が走っている。そこに明治製菓の商品やロゴが入り、車体全体がまるごとチョコレートのような見た目になっていた。記念企画の色に便乗するというアイデア自体は、実は前例のあるものだったのだ。

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