バチカン公認、カピバラは魚である
音声を読み込めませんでした。少し待ってからもう一度どうぞ
カピバラと聞いて思い浮かぶのは、温泉に浸かってのんびりしている姿ではないだろうか。茶色い毛に覆われた、犬ほどの大きさの地上最大のネズミ。水辺で水草を延々と噛み続け、近くにワニがいても気にしない、世界一のんびり屋として知られている。
そのカピバラは、カトリック教会の基準では「魚」である。
話は16世紀のベネズエラから始まる。カトリックの聖職者たちは、この巨大なネズミが囲い込みやすく、しかも思いのほか肉が取れることに気づいた。塩漬け豚のような味だと言われるその肉はすぐに定番食材となり、やがてベネズエラ人が食べすぎて野生個体群が絶滅しかねないほどの人気を得る。
ところが、信仰のほうに問題があった。四旬節(レント)——復活祭前の40日間の断食期間には、陸の動物の肉を食べることが禁じられている。カピバラは貴重なタンパク源だが、まぎれもなく哺乳類だ。代わりに許されるのは魚。しかし40日もカピバラを我慢するという選択は、彼らの中になかった。
そこで聖職者たちは、自分たちと信徒を代表してバチカンに手紙を書いた。曰く、この生き物は水かきを持ち、長い時間を水中で過ごし、魚のような味がする。だから魚と認めてもらえないか——陸にいる時間や、魚とは似ても似つかない特徴の数々は、きれいに伏せられていた。
そしてバチカンは、この願いを認めた。カピバラは神の目から見て魚となり、ベネズエラ人は今日に至るまで、レントの時期に堂々とカピバラを食べている。
屁理屈のようだが、教会の論理は一貫している。もともとこの戒律は、肉が贅沢で罪深いものとされ、魚が質素なタンパク源とみなされていた中世の感覚に基づくもので、環境史家によれば、問題は哺乳類か魚かではなく陸か水かの対立だった。だから水中で過ごす動物は、水の生き物として断食中の食卓に並べる。
この「魚」判定はカピバラだけの特権ではない。バチカンはビーバーやマスクラットといった半水生の哺乳類にも例外を認め、カメやワニのような水棲の爬虫類もレント中は魚として扱われる。ただし、世界の特定の地域を除けば、こうした例外が適用されることは稀だ。だからこそ、カトリック教徒の顧客獲得を狙ったマクドナルドは、マックビーバーではなくフィレオフィッシュを発売したのだ。