生き物第200号朝刊

チンチラ、水に濡れたら命がけ

チナミニチンチラが読み上げます(3分55秒)

チンチラと聞いて思い浮かぶのは、あのふわふわの毛並みではないだろうか。触れば指が沈むような密度で、見た目にも触り心地にも文句のつけようがない。ペットとしての人気も、この毛皮のおかげだといっても過言ではない。

ところが、その毛皮はチンチラ自身にとって扱いの難しい装備でもある。チンチラは水で洗ってはいけない動物なのだ。原因は、自慢の毛の密度そのものにある。人間の毛穴からは毛が1〜2本生えるが、チンチラは1つの毛穴から平均60〜70本、資料によっては80本もの毛を生やす。陸上の哺乳類で最も密度の高い被毛という称号は、この数字で取っている。

ここまでなら自慢話で終わるのだが、問題はこの先だ。密度が高すぎる毛は、水を通すのに水を逃がさない。一度濡れると水分は皮膚のすぐ近くに閉じ込められ、ドライヤーを当てても完全に乾くまでかなりの時間がかかる。その湿って温かい毛の奥は、菌にとって理想的な環境になる。皮膚炎や皮膚の感染症を招き、真菌の感染症は治療が難しく、早く気づかなければ命に関わる。おまけにチンチラは体温調節が苦手で、濡れた毛は断熱の役目を果たせない。ふわふわは濡れた瞬間に重りと冷却材へ変わってしまうのだ。

では、どうやって体を清潔に保つのか。答えは砂である。南米アンデスの乾燥した山岳地帯で暮らしてきたチンチラは、火山灰の中で転がって汚れを落としてきた。細かすぎる粒子が毛の根元まで入り込み、余分な油分や湿気、ゴミを吸着し、チンチラが体を震わせるとすべて落ちていく。水を一滴も使わずに洗濯が完了するという仕組みだ。この砂浴びは本能に属する行動なので、飼育下のチンチラにも教える必要がない。新しい砂を用意すれば、チンチラは迷わず飛び込んで転がり回る。

もし、この砂浴びを怠ったらどうなるか。チンチラは被毛の質を保つために「ラノリン」という脂肪物質を分泌している。人間の皮脂のようなものだが、油分を含むラノリンが自然に蒸発することは決してない。放っておけば毛は油で湿り、ゴミが付きやすくなり、ときに毛が固まってしまう。舌で毛づくろいしようにも、密度が高すぎて舌が毛の根元まで届かない。つまり砂で削ぎ落とす以外に手がないのだ。あのころころと転がる愛らしい動作は、本人にとっては唯一の入浴手段なのである。

ちなみに、

砂浴びのやりすぎもよくない。頻度が過剰だと皮膚が乾いて白く粉を吹き、目に粒子が入って結膜炎を起こすこともある。健康な成体の目安は週に2〜4回程度、砂の容器は入れっぱなしにせず時間を区切って取り上げるのが基本とされている。命を守るための入浴なのに、長風呂は禁物なのだ。

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