文化第210号朝刊

就職面接に来ただけの男、BBC生放送の「IT専門家」にされる

チナミニチンチラが読み上げます(3分49秒)

ニュース番組に「IT専門家」と肩書きの付いた人物が映り、司会者が話を振る。画面に出たその肩書きを、視聴者はまず疑わない。

2006年5月8日、BBCの生放送に登場したIT専門家は、その日たまたまBBCに就職面接を受けに来ただけの男だった。

ロンドンのBBCテレビジョンセンター。コンゴ共和国ブラザヴィル出身のガイ・ゴマは、IT部門でデータを整理する職に応募し、メインの受付で面接の順番を待っていた。同じ頃、別の受付エリアでは、イギリスのIT専門家ガイ・キューウィーが生出演の準備をしていた。テーマは、ビートルズのレコード会社アップル・コアとアップルコンピュータが争った裁判である。

キューウィーを迎えに行ったプロデューサーは、彼がメイン受付にいると聞かされていた。受付係にガイ・キューウィーの居場所を尋ねると、彼女はゴマを指さした。本当にこの人物で間違いないかと念を押しても、答えは変わらなかった。プロデューサーはキューウィーの写真を見ていたが、生放送まで残り5分しかない。彼はゴマに近づき、下の名前だけを確認した。自分の名を呼ばれたゴマは、そうだと答えた。

そこからは流れ作業だった。スタッフがゴマにメイクを施し、スタジオへ通し、カメラの前に座らせてマイクを付ける。奇妙な段取りだとは思いながらも、ゴマはこれから就職面接が始まるのだと信じていた。

そして司会のカレン・バウアーマンが、彼を「インターネット専門家ガイ・キューウィー」と紹介する。取り違えを理解した瞬間が、ゴマの顔にはっきりと映っている。しかし生放送中であることを察した彼は、騒ぎを起こさない道を選んだ。アップルの裁判と音楽業界への影響について投げられる質問に、できる限りの答えを返していったのだ。一方、本物のキューウィーは待合室で、自分の代わりに知らない男が座っているのを見てショックを受けていた。音声は聞こえていなかったという。

インタビューが終わって20分後、ゴマは本来の目的である就職面接に臨んだ。所要10分。不採用だった。

ただ、この即席の専門家は的を外してもいない。これから音楽のダウンロードは増えるかと問われた彼は、多くの人がインターネットから欲しいものを落とすようになると答えた。10年後、この一件がBBCの記憶に残る放送事故の一つに選ばれたとき、ゴマの予測が結果的に正しかったことも指摘されている。本人は後に、あの日を「誰でもない男から伝説へ」と振り返った。

ちなみに、

2026年、ゴマはこの出来事を一冊の本にまとめた。共著者は、あの日ロビーから彼を連れ出した当のプロデューサーである。

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