文化第218号夕刊

77万ドルのイヤリングを飲み込んだ男

チナミニチンチラが読み上げます(3分34秒)

高級宝飾店の奥には、特別な客だけを通す個室がある。2025年2月26日の昼下がり、フロリダ州オーランドのショッピングモールに入るティファニーでも、一人の男がその部屋へ案内された。予約はなかったが、地元NBAチーム、オーランド・マジックの選手の代理で商談に来たと名乗ったため、店員は扱う額の大きさを考えてVIPルームへ通したのだ。テーブルに並べられたのは、ダイヤのイヤリング2組と指輪1つ。イヤリングは2組で76万9500ドル、指輪は58万7000ドルだった。

商談の途中で、男は突然席を立った。商品をつかみ、スライド式のドアを力任せに押し引きして出ようとする。止めに入った店員ともみ合いになり、指輪は手から叩き落とされて床に転がった。店員はその際腕に傷を負ったが、それでも男はイヤリング2組を握ったままドアをこじ開け、駆け抜けていった。

逃走に使われた青いSUVは、ヒューストンで借りたレンタカーだった。警察は防犯カメラと料金所の記録をたどり、テキサスへ戻る最短ルートを走るその車を特定。州警察が同じ日の午後8時前に、高速道路でこれを停めた。普通ならここで、77万ドルのイヤリングは車内か男の身体から見つかって一件落着である。ところが男は、警官に拘束されている最中に、奪った品を口へ押し込んで飲み込んだのだ。

連行先の拘置所でスキャンを撮ると、胃の中に複数の異物がくっきりと光って写っていた。合わせて13.05カラットのダイヤが、人間の胃の中にある。警察はこれが盗まれたイヤリングだと考えたが、裏づける方法は一つしかなかった。体内を通過して出てくるのを待つことである。男自身も気になったようで、拘置所では、胃の中のものでも罪に問われるのかと職員に尋ねたという。

男は病院で刑事の監視下に置かれ、回収が終わるまでに12日かかった。起訴内容は第一級重窃盗と、“覆面”強盗。覆面などしていなかったが、鼻にガーゼを当て、腕に包帯を巻き、帽子をかぶっていたため、警察はこの格好が州法の定める覆面に当たると判断したのだ。さらに彼は、2022年にもテキサスの別のティファニーでほぼ同じ手口の事件を起こしたとされる。

ちなみに、

回収されたイヤリングはティファニーに戻され、店の職人がシリアル番号を照合して盗まれた品だと確認している。もちろん、洗浄も済ませたうえでだ。護送車の中で、男は「窓から投げ捨てればよかった」とつぶやいたという。

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