傷ついたクシクラゲ2匹、合体して「1匹」になる
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クシクラゲは、海を漂うゼラチン質の生き物だ。名前に「クラゲ」とつきますが、刺胞動物(ミズクラゲなど)とは異なる、毒針を持たない生き物だ。透明で、ひらひらと流されるだけのごく静かな存在、そう思う人も多いだろう。
ところが2024年、アメリカの海洋生物学研究所の水槽で、研究者たちは奇妙な一匹を見つけた。ほかの個体より明らかに大きく、体の後ろ側が2つあり、感覚器まで2つ付いている。まるで2匹を途中でくっつけたような姿だった。事実、それは元々2匹だった。採集のときに傷を負ったクシクラゲ同士が、一晩のうちに胴の真ん中で融合し、1匹になっていたのだ。
研究チームは、これが本当に融合によるものかを確かめるため、別の個体の体の一部を切り取って傷をつけ、2匹ずつ並べて置いてみた。すると10組のうち9組が成功した。一晩明けると、元が2匹だったとは分からないほど、継ぎ目なく1つの体になっていた。融合した個体は、少なくとも3週間生き続けた。
驚くのはここからだ。研究者が片側の体をつついてみると、全身が反応したのだ。元は別の個体だった反対側まで、同時にびくりと縮んだ。つまり、神経系が完全につながっているのである。
融合直後の1時間は、それぞれの体がばらばらに動いていた。しかし時間が経つにつれて収縮のタイミングが揃っていき、わずか2時間後には筋肉の動きの95パーセントが完全に同期した。消化管も同じだった。片方の口から蛍光色をつけた餌のエビを食べさせると、その餌は融合した一本の管を通って両方の体へ運ばれていった。食事を共有する、1つの生き物になっていたのである。
なぜこんなことが起きるのか。研究チームは、クシクラゲには自己と他者を見分ける仕組み——他個体認識——が欠けているらしいと考えている。これは免疫の根っこにある機能で、人間の臓器移植で拒絶反応が起きるのもこの見分けが働くからだ。それを持たないクシクラゲは、他人の組織を自分の体に取り込むことに何の抵抗もない。だからこそ、移植医療のヒントになるかもしれないと期待されている。
ただし、1つになりきらなかったものもある。この種の肛門は用を足すときだけ開く仕組みで、融合後もそれぞれの体に1つずつ、計2つが残った。神経も筋肉も消化管も溶け合って同じ体になったのに、排泄だけは別々のタイミングで済ませていたのだ。もっとも、野生でこの融合が頻繁に起きているとは考えにくい、と研究者は見ている。この種の成体は、そもそもそんなに近くに居合わせないからだ。
この「くっつく」性質に気づいたのは現代の研究者が最初ではない。1930年代、同じ研究所の海洋生物学者がクシクラゲの接合実験を行っていたという。なかでも圧巻だったのは、4個体の体に5個体目の口・感覚器・肛門を組み合わせた一匹だ。『フランケンシュタイン』の作者が震え上がりそうな細工が、90年前の水槽の中で既に泳いでいた。